【本】無印夢

□誰もいない隣
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豪炎寺がキャラバンからいなくなって、不安や哀しみ、いろいろな物が胸の中を渦巻く
キャラバンの中で氷星は、隣に誰もいない虚無感に溢れたバスが更に嫌いになっていた
いつもなら豪炎寺の肩に寄りかかって寝ているはずなのに、その相手がいない為何をするわけでもなく、ただぼーっと外を見ている
外を、と言ってもその瞳は何処を見据えているのかは分からない


「氷星ちゃん、…寝といた方がいいんじゃない?」


夜もほとんどと言っていいほど寝ていないことを知っている秋は、辺り触りのない程度に提案していたが


『今はあんまり酔ってないし、大丈夫』


そう言って、氷星はまた窓の外の遠くを見据えた
でも…と食い下がってみるが、どこか悲しそうな笑顔で『大丈夫』と言われてしまえば、もう何もいえない
氷星が寝れない理由も分かっているが、それは自分達ではどうしようもない事で
キャラバンにいる他のメンバー達はそんな氷星を見て自分が何も出来ない子供だと言う事を思い知らされる
今この状態の氷星を元に戻す事のできる人物は、ココにいない彼にしかいないのだから


隣に誰もいないって、こんなに寂しかったっけ
私が見ている世界ってこんなに色がなかったっけ

なんでだろう。あの人が、豪炎寺くんがいなくなっただけでこんなに胸にぽっかりと穴が開いたように感じる
ただ、いないだけ
それなのに私の心は違う所にある気がするのは………どうして?




そうして、私は眠れない日々を過ごす



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