【本】無印夢

□バーベキューに肝試し!
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「腹減ったッス〜」
「俺もだ。けど、楽しみじゃないか晩飯!皆が自分の好きな物を作るんだぞ!」


練習試合で再び腹を空かし、空を見ればオレンジ色
時間が過ぎるのはあっと言う間で時間はもう夕飯時であった

「さっ!やるぞー!!」

夕飯はそれぞれが作ったものを皆で分けて食べよう、と言う事だったのでそれぞれが料理を作ろうと気合を入れたその時

「ちょい待ちーー!!!!」
バババババババ


耳を裂くような大きな音
同時に聞こえた見知った声
そして物凄い風が一同を襲う
なんだなんだと上を見上げれば、そこには一機のヘリが
そしてその入り口から、見知った顔が3つほど覗いていた


「氷星!リカ!塔子!」
「そこにはコイツも追加でなー!!!!」

ぽいっ

「「「「「『え?』」」」」」


グランドに着陸しようとしていたのかそれなりに高度が低くなったヘリ
あろうことか唯はそんな所から塔子にかるーく投げ出されてしまった



「きゃぁぁぁあぁ!!』



陸に近付くに増してスピードを上げて落下する
慌ててグランドにいた全員がそちらへ駆け出したが間に合うか間に合わないかは分からない
もう駄目だ、そう思って唯は目を瞑ったが待ち受けていたのは痛い地面とのご対面ではなかった


バスッ


「……ッ」
『え……?』


誰かに抱えられたような感覚
閉じていた目を開けてその本人を見やる
多少高さがあったため結構な重さであっただろう唯を受け止めたのは


『豪炎寺くん!』
「大丈夫か?」
『う、うん。それより腕…!』

「ナイスキャッチやで!!豪炎寺!」
「唯は任せたからなー!!」



呑気にヘリからそんな言葉が聞こえたので唯は絶対に後でメールしてやろうと思っていた



『そうだ、腕!大丈夫?折れてない?』
「大丈夫だ。氷星自体は軽いしな」



それを聞いてホッと息を付く
遅れて周りに駆け寄ってきた一同に一通り心配され、2人とも無事だと確認すると、鬼道が全員が思っていることを代表して口を開く


「どうしてこんなことになった」


ごもっともである
唯は、最初はちゃんと女子同士の合宿だったが途中罰ゲームでこうなってしまった事を説明した
それを聞き終えた円堂を除く全員がハァ、とため息
でもリカなら言いかねない、そう考えるしかなかった


「ま!いいじゃないか!氷星の料理も食べれるんだし!」
「お前は気楽だな…」


円堂の一言で本来は夕飯を作ろうとしていたことを思い出し、もう一度料理に戻ることに
唯は飛び入りでの参加だったが、やっぱり全員が作るのだからと自分もフライパンを手に取った








「料理名は丸ごとキャベツっス!いただきまーす!」
「…料理してないだろ…それ……」

「円堂、そいつは?」
「サッカーボールおにぎりさ!大きなおにぎりに、海苔で模様をつけたんだ!」
「あー!サッカーボールか!俺はてっきり溶けかけた雪だるまの頭かと思ったぜ」
「え?そんなに芸術的か?参ったな…アハハ!」
「褒めたつもりもないけどな!ヘヘッ!」





「美味しそうな匂い…何これ?」
「おでん!前にマネージャーからレシピを聞いたたことがあったからな」
「大根と卵予約!」
「よーし!」




それぞれ個性的な料理のようだ
そんな中唯はこの人数だから、と大きなお鍋いっぱいにチキンライスを作っていた
唯が作るのはオムライス


『ケチャップどこだったかな…』


周りを見回しても目当ての物は当たらない

「「唯(ちゃん)!!」」
『はっはいぃぃぃぃ!』

誰かに聞こうと思った時、後ろから急に両肩を掴まれた
なんのデジャヴだろうか後ろを振り返れば物凄い血相の吹雪と綱海
その後ろには立向居がオロオロとした表情で立っている


「「ラーメンと言えば…」」
「塩?!」
「ミソ?!」


どうやらこの2人がラーメンについて揉めているらしい


「やっぱ塩だよな!」
「いや、ミソだよね唯ちゃん」
『えっと……』

「「どっち!!!?」」



『……し、』


綱海が勝った、と思った瞬間

















『醤油っ!!!』










3人がずっ転げる
唯は何となく顔を赤くして小さく言ったのだった

『だって醤油が一番美味しい…よ……!』

好みは人それぞれ






ラーメン騒動もひと段落
唯は再びケチャップ探しへと戻る
すると唯に同じく何かを探しているように周りを見回しながら豪炎寺が傍へと近付いてきた


「氷星。かつお節を知らないか」
『あ、それならこっちにあったよ。豪炎寺くんケチャップ知らない?』
「ケチャップならさっき綱海が持ってたぞ」
『ありがとう!はいかつお節』
「助かった。氷星はオムライスか?」
『正解。豪炎寺くんはたこ焼き?』
「全員分作るのも楽だからな」


確かにたこ焼きならば大量に生産する事もあまり手間にはならない
自分もそこまで配慮すればよかった、と鍋いっぱいのチキンライスに視線をやる

「それ…俺が教えたオムライスか?」
『!!』

バレた
実はこのオムライスは前に豪炎寺に教えてもらったレシピだったのだ
気恥ずかしさに顔が赤くなる
豪炎寺は唯の頭をポンと撫でてから去っていった


「楽しみにしてる」


そう囁いて
一時思考が停止してしまったものの、我に返ってもう一度その言葉をリピートする
そうだ、教えて貰ったからにはちゃんとしたものを作らないと
綱海にケチャップを借りに行きながら、もう一度改めて意気込んだ


『綱海くん!ケチャップ借りていい?』
「お、ワリィな!ほらよ!」


ようやく目当ての物を見つけることができた


『ありがとう』
「どういたしまして………ってうおぉ!豪炎寺スゲェぜ!」
『へ?』
「ん?なんだ?」


綱海の視線は先程唯からかつお節を受け取った豪炎寺
たこ焼き機の傍には皿、ソース、かつお節などが既に用意されている


「見てみろ!たこ焼きだ!」
「たこ焼き?リカじゃなくて?」
「豪炎寺だ!」
「豪炎寺がたこ焼き?」


唯も思わず数刻前自分をヘリから突き落とした元凶である1人の顔を浮かべるが、それをぱたぱたとかき消して円堂や綱海と同じく豪炎寺のたこ焼き捌きを見学する事にした

「ハァッ!」

目にも留まらぬたこ焼き裁捌き
盛り付けも文句のつけようがなく美しい


「完成だ」
「「「「「おぉぉぉ〜」」」」」


元から豪炎寺が料理上手、と言うことを知っているので唯は小さく拍手をしながら笑顔でそれを見届ける


「豪炎寺、何でリカの前でやらなかったんだよ」
『そういえばそうだね…リカちゃん喜びそうなのに』



「一之瀬の様にはなりたくなかったからな」



「「「「「『なるほど』」」」」」



一同納得
すると今度は木暮が自分の作ったのも上手い、とアピールを始めた
唯はいい加減に作らないと間に合わないと思い鍋を放置してあるコンロへと戻る


『さてっ!』


頑張るぞー!そう言ってひたすらオムライスを作っていたら、円堂が氷星ー!と唯を呼んだ
もう自分の料理も完成しつつあったのでそれを机に置き、円堂の元へ向かう
そこには立向居作の美味しそうな鍋が置いてあった


「氷星も来てみろよ!立向居のモツ鍋だってさ!」
『モツ鍋?美味しそう…!』
「じゃ、皆で食べるッス!」

「「「「『いただきまーす!』」」」」


全員がそれを口に入れた瞬間、一瞬の沈黙が走りその沈黙を破ったのもこれまたほぼ全員だった


「「「「辛あぁぁぁあぁぁ!!!!」」」」
「み、水ーー!!!!」


風丸もビックリな速さで水を求める
唯は立向居の隣にぽつんと立ち、首をかしげていた


「え…?そんなに辛いですか?」
『ちょっと辛いけど…私はコレぐらいがいいと思う…よ?』
「そうですよね?変だな…こんなに美味しいのに…!」
『ね』


唯に辛い物は効かなかった







「あー辛かった」
『そんなに辛かった?』
「可笑しい!唯お前ぜってー可笑しいぞ!」


未だに舌がヒリヒリするらしい、口からだらしなく舌が出ている
綱海は唯を指差して言ったが本人はそうは思っていないらしくきょとんとしていた
鬼道と豪炎寺は元から口にしていなかったらしくケロリとしている
全員を毒見として使ったようだ


「そういえば、氷星は何を作ったんだ?」
『オムライス。…皆…食べてくれる?』


正直自身がないので下手のお願いになってしまう
不安だったのだがそんな物は皆には関係なかったらしい、全員が食べるといって唯のオムライスを手に取った


「普通に美味そうだな!」
『ま、不味かったらごめんね…!』

「「「「いただきまーす!!!」」」」


立向居のときと同じく全員が一斉にオムライスを口に入れる
あえて相違点を上げるならば、鬼道も豪炎寺も同時にそれを頬張った事であろう
ドキドキとした面持ちで唯は様子を伺う
一番感想を率直に言ってくれそうな円堂に耳を傾けた


「美味い!!」


円堂の言葉を筆頭に全員が美味しいと口々に声をあげる
その様子に思わずホッと一息ついた


『よかった…』
「唯。今度レシピ教えてくれないか?」
『レシピ?』
「あぁ」


オムライス気に入ったようで風丸が唯に問う
まさかそんなこと聞かれるとも思っていなかった
そのせいだろう、少しビックリして思わず口を滑らせてしまったのは


『そ、それなら豪炎寺くんに聞いた方がいいと思うよ?』
「豪炎寺に?」
『うん。だってこれ豪炎寺くんに教えて貰ったか……ら』

「豪炎寺が唯に教えたのか!?2人で!?」
「やるな。豪炎寺」


しまった、そう思ってももう遅かった
物凄い勢いで茶化されてしまい結局顔を真っ赤にしたままトイレに逃走
唯が逃走してる間豪炎寺も物凄い勢いで茶化されたのは言うまでもない








(は、恥ずかしい…豪炎寺くんごめんね…!)

(豪炎寺さん…スミに置けないないッスね〜)
(まさか氷星に料理を教えていたとは…)
(もう夫婦でよくないか、夫婦で)
(お!じゃあ結婚式には呼んでくれるんだな!)
(話を掘り返すな…!!)
(顔真っ赤で言われても説得力ないよ、ウッシッシ!)



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