【本】無印夢

□イタリアの白い流星
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今日はちょっと運が悪い気がする
イナズマジャパンのメンバーと言ってもマネージャーも兼ねている私
ドリンクの粉や間食の買出しに行っていたけど…いつも行っているお店は休業だった

違うお店に買いに行こうと思ったらもの凄く道に迷ってお店は見つけたものの帰り道が分からない
どうしようかなと悩んでいたら小さい子供達からサッカーボールを取り上げて遊んでいる低レベルな男の人たちがいたので軽く懲らしめて子供達にボールを返してあげた
仮にも日本代表。とりあえず女だからって舐めていると痛い目見ることを教えておいた


「お姉ちゃんありがとー!」


手を振る子供達に私も手を振る
無邪気にボールを蹴る姿はとっても微笑ましい
買い物をした袋片手に帰り道を散策した
早く帰らないと秋ちゃんに怒られちゃう…


「キミ、サッカー上手いんだね!」
『え?……!』


後ろから声が聞こえた
振り返ればこちらに向かってくるサッカーボール
ボールを蹴るのに邪魔な袋を上に投げて、ボールを蹴り返す
私が袋を落ちてきた袋を受け止めたのと、そのボールが蹴り返した人物に止められたのは同時だった
中身…大丈夫かな


『誰…?』


そのボールの先にいたのは、一人の少年
多分私と同い年ぐらいであろうその少年は、私の元へ目を輝かせたように走ってくる
円堂くんに似てるな、直感的にそう思った


「さっきの見てたよ、ナイスカット!俺、フィディオ・アルデナ!君は?」

『唯。氷星唯だよ』
「唯?もしかして日本代表の?!」
『うん。一応そうだけど…』
「やっぱり!」


どうやらこの少年、もといフィディオくんは私を知っているらしい(しかもさっきの見られてた…!)
自分で言うのもなんだけどフットボールフロンティアインターナショナルは少年サッカーの大会
そこの特例で参加している女の私はそれなりに浮いていると思う
知られていてもあまり不思議ではない
フィディオくんもサッカーが好きらしく、彼の性格からか会話はポンポンと弾んだ

サッカーに関する洞察力は負けない自身がある、さっきのシュートからしてフィディオ君はきっと実力者だ


「唯、俺と勝負してくれないか?」
『え?』

「俺の実力を試してみたいんだ!」


やっぱり、フィディオくんは円堂くんの属性らしい
実力はある、でも更にその上へ上へとどこまでも上り詰めようとする心が伝わってくる
その真剣などこか楽しそうな顔に円堂くんを重ね、思わずいいよと返事をしてしまった


『その代わり、真剣勝負』
「勿論!」


私も、どこまでも上へと行きたいと願う一人だから









「勝負は1回。唯が俺を抜けたら勝ち、抜けなかったら俺の勝ちだ」
『わかった』

ザッ



張り詰める空気
フィディオくんはきっとかなりの実力者
舐めてはかからない
彼も、私も



『行くよ!』
「来い!!」




―――――――
――――――
―――――
―――
――



「ありがとう唯!楽しかった」
『ううん。私もあんなにワクワクしたの久しぶりだった…ありがとうフィディオくん。それにバス停まで送ってもらっちゃって…』


そう、勝負が終わって帰らなければいけない迷子の私をフィディオ君はバス停まで送ってくれた
構わない、笑顔で言ってくれたフィディオくんに感謝
そうこうしている内に日本代表チームの宿方向へ向かうバスがやってきた
じゃあね、とバスに乗り込もうとした瞬間、グイッと腕を引っ張られてフィディオくんの方を向けば頬に柔らかい感触がする



「今度は、フィールドで会おう!唯!」
『へ……?』



プシュー、バスのドアは無常にも閉まった
“次はフィールドで”この言葉の意味を考えるよりも先に、頬に残された感触の方が頭に残ってしょうがない


『(き、キスされた…!)』


外国の人はスキンシップが多いのだろう、そう考えて必死に頭の中を落ち着ける
どうしよう、宿に戻るまでに元に戻ってますように!






(おかえり唯ちゃん。遅かったねー……あれ?顔赤くない?)
(い、いや、ちょっといろいろあって…)
(あ、先輩それ私が運びますよ!久遠監督が他のチームのデータを纏めとくように言ってましたからそっちをやってください!)
(データを?ありがとう春菜ちゃん。パソコン部屋だからちょっと部屋篭るね)
(ご飯には呼ぶから)
(ありがとう)

(さて…データを…
まずはイタリア代表“オルフェウス”……キャプテンは“白い流星”と呼ばれるフィディオ・アルデ…え、ふ、フィディオくん!?)


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