【本】青春ボイコット
□第15話
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ピピピピピ
「夏目ー!ケータイ鳴ってるよー!」
『はーい!』
忙しなくホールと厨房を行き来していた夏目のケータイ電話に着信音。
すぐに鳴り終った所からしておそらくメールだろう。
溜まっているオーダーをこなし、慌ててケータイを開けばそこには松風天馬の文字が。
『天馬?』
ピピ、とボタンを押して受信ボックスを開けば今にもワクワクした表情の天馬が思い浮かぶほどの内容だった。
:松風天馬
:no title
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夏目!明日栄都学園と練習試合するんだって!
それで人数が足りないから俺たちもスタメンで出れるって音無先生も言ってた!
俺今日は河川敷で特訓して帰るから悪いけどそっちの方が帰るの早いなら秋姉に言っといて!
-end-
『…天馬らしいや』
メールの返信もそのままに夏目は電話帳を開く。
木野秋、の文字を押してケータイを耳に押し当てた。
何度かのコール音。
3度目のコールが鳴った時、電話越しから秋の声が聞こえた。
『あ、もしもし秋さん?今日は僕も天馬も帰るの遅くなりそうです』
夏目はそう言って笑った。
秋も秋で「はいはい」と何かを悟って、笑った。
ケータイを閉じ、鞄に仕舞って再びホールへ戻ろうとすれば厨房から虎丸の声が飛んでくる。
「誰から?」
『例の面白い友達からです。特訓して帰るっていうから僕も付き合おうと思って秋さんに電話してました』
「俺も付き合ってやろうか」
『…きっとビックリしますね』
「冗談だよ。ほらホール!」
軽く冗談に聞こえない。
虎丸に背を押されホールへ走る。
―今日は天馬に負けないぐらい特訓してやろう。
そう心に決めて。
意気込む明日は運命の日
(天馬!どーしたのそれ)
(え?ちょっと特訓で……)
(……秋さーん!救急箱ー!)
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