【本】青春ボイコット

□第22話
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練習が遅れたからと言ってバイトまで遅れていい、と言うほど世の中は甘くない。

虎ノ屋が開店する時間まであと僅か。
少し痺れる右腕を押さえながら駆けこんだ虎ノ屋で準備をしつつ今日の速報をキッチンにいる虎丸に大声で叫ぶ。



『虎丸先輩!今日久遠監督の代わりに新監督が来たんです!!!!』
「あぁ。円堂さんでしょ」

『知ってたんですか!?』



勿論と言った感じで言葉を返す虎丸にこの先輩は…とつくづく思う。



「話は聞いてたってだけだよ」

『もー……先言っといてくれたっていいじゃないですか…』
「いやー隠しといた方が面白いと思って」
『面白いって…』



茶目っ気を通り越してあきれてしまう。
まぁそれが虎丸の良い所と言うかなんというか。
こんな先輩でもこうしてついてきてしまう辺りは彼の人徳だと夏目は思った。


「円堂さんならきっと導いてくれるさ。昔の夏目みたいにね」
『……』


昔の自分。
随分荒んでいたもんだと思い出してみて我ながらため息が出る。

着々と開店準備を進める中キッチンで仕込みを終えた虎丸が夏目へ近づく。
そしてアームウォーマーを着用している夏目の右腕を指さした。



「夏目、今日右腕使っただろ」



何でもお見通しと言わんばかりの断定された物言いに夏目は反論もせずコクリと頷く。


『先輩とちょっと』

「…大丈夫そうだけど気をつけなよ」
『はい』
















:水城夏目
:no title

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明日の朝練前に去年のホーリーロードのビデオ見るから今日はちゃんと休みなよ。
じゃないとビデオ見せないからって葵ちゃんから。

ついでに僕も怒られるからちゃんと休んでてよね!

-end-









パタン、天馬にメールを送りケータイを閉じた。


『明日が楽しみ』


そして今日もバイトが始まる。







それぞれ

(難しいですね)
(俺もホントにそう思うよ)


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