【本】キミと奏でる愛の旋律

□今日は楽しい雛祭り
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『明かりを点けましょぼんぼりに〜』



語尾に音符が付いてきそうな程楽しそうに廊下を歩く奏。
その歌が示すもの、今日はひな祭りの日だ。


「そっか、今日ってひな祭りだったっけ」
「そうよ!今日は女の子の日なんだから!」

「え〜?葵が女の子?」
「なによ天馬!文句でもあるの?」
「別に〜」
『あ、葵ちゃん!雛あられあるんだけど食べる?』
「食べる食べる!」


小さな袋に包装された雛あられを開封し、色とりどりのあられを2人できゃっきゃと囲む。
今日だけは女が主役の日。
天馬からしたらいつも葵に尻敷かれているためあまり変わらないともいえよう。

だか女子2人が雛あられを食べながら笑い合う光景はなんとも微笑ましいものだ。


「そういえばこのあられどうしたの?」
『これ?お兄ちゃんがくれたの』
「……キャプテン……」


ニヤケ顔で奏にあられを渡す拓人を想像し、思わず残念な気持ちになる。


「そういえば昔あの歌の替え歌歌ったりしたよな」
「あー!あれ歌った歌った!」
「あれでしょ!明かりを点けましょ」

「「「爆弾にー」」」

「ドカンと一発?」

「「「ハゲ頭」」」


中学生男子的発想はもちろん彼らにも適用されるわけであって。
男子は馬鹿笑い、女子は雛菓子を食べる。
当たり前ながらも女子と男子とのものの楽しみ方は違う。

奏は替え歌を歌いながら笑う天馬、信助、マサキを見やりその様子を見て笑う。


『面白い替え歌だねっ』

「え?奏知らないの?」
『うん。初めて聞いた』
「キャプテンも絶対ちっさい頃歌ってただろうに」
『ん〜?お兄ちゃん……聞いたことないよ?』


確かに歌いそうにはない雰囲気だが、いくら拓人であってもそれぐらい聞いたことがあっただろうに。


「俺がそんな外道な歌を教える訳がないだろう」
「うっわぁぁぁぁキャプテン!」

「松風、西園、狩屋今度その歌を奏に向かって歌ってみろ。お前たちの顔面にフォルテシモをドカンと一発」
「「「ハゲ頭」」」
「話聞いてたかお前達」


『お兄ちゃん?なんで私の耳塞いでるの?』


「おーい神童!さっさと行くぞ!」
『あ、蘭ちゃ〜ん!』


廊下は既に軽い戦場となりつつあった。
拓人はどこからともなくサッカーボールを取り出し3人を追い掛け回している。
それに巻き込まれそうな奏と葵。

拓人を追いかけてきた霧野がハァ、と一息ついた。
慣れたものだが面倒なことこの上ない。



「ザ・ミスト」



スッと辺りを覆った霧の中を音も無く過ぎる。
途中、奏と葵の手を引いて霧から脱出。


『蘭ちゃん?』
「あいつらは置いてくぞ」
「…いいんですか?」

「いい。……あ、雛あられいるか?」

『あ、いるっ』






今日は楽しい雛祭り

(そうだ、うちの家におっきな雛人形あるんだけど葵ちゃん教来る?)
(わっ!行きたい!)
(蘭ちゃんも来る?)
(…少しだけならな)

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