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□タリオ
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※中学時代に体だけの関係有り→高校時代に自然消滅→柳は他の大学に進学→の2年後

仁王視点






久々に入った、沿線ではない大きな本屋。
大学の授業が突然休講になり、暇を持て余した俺はふらふらと物色していた。
擦れ違い際に、肩をぶつけて本を落とす。
不機嫌に拾い上げて、見上げたと同時に、
「注意散漫は相変わらずだな、仁王」
「…ぁ」
あの頃と何も変わらない、柳の姿があった。





そのまま柳の下宿に向かった。
酒を飲みながら、他愛ない話を交わす。
やがて時間が経つにつれ、話題は色めいた方向へ。
「懐かしいな…もう5年か」
「中三が最後じゃったか」
体だけの関係を持ち掛けてから、幾度となく交わった。
湧き上がった熱は、意外にも短い命で。
「お前、高校に入ったら見向きもしなくなったもんな」
「責めんといて。若気の至りじゃけぇ」
「まぁ、その時から俺は貞治と付き合い出したから、むしろ好都合だったけどな」
「…へ?」
突然の情報に、俺は缶から口を離した。
「何だ、てっきり気付いて止めたのかと思っていたが」
「浮気してたってわけか?」
「お前と付き合ってたんなら、そうなるな」
「…強かやのぅ」
呟くと、満足げ
に酒をあおる。
少し朱に染まった頬が、やけに憎らしい。
「今も付き合ってる、と言ったらどうする?」
「…どうもせん」
「付き合ってるが、別れる寸前だ、と言ったらどうする?」
「…どうもせん」
「据え膳も食わない人間になったか」
「…お前さんは、棘が増えたのぅ」
呆れた風の俺に笑いかけると、胸ポケットから一本、白い棒。
慣れた動きで、ライターの火を付ける。
「…煙草」
思わず、指を指した。
「苦手か?」
「いや…」
衝動的に、煙草を持った腕を引き、口付けた。
あの頃にはない、苦い味がした。
柳はふふ、と笑った。
「…煙草に欲情するのか、変わった奴だな」
「…なんつうか、あれや…お前さんにハマったのって、ギャップが原因じゃけぇ」
「ギャップ?」
「涼しい、淡白な顔しといて、セックス持ち掛けたら乗ってきたやろ?結構やらしかったし。最初はお前さんの動揺した顔見とうて誘ってんけど、そのギャップにハマってもうた」
「だから、煙草もギャップということか」
「百害あって一利なしだ、とかゆいそうやのに」
「弦一郎じゃあるまいし」
「その通りじゃな」
しばし笑い合う。
柳は美味そうに煙草を吸い、ゆっくりと吐き出した。
「…俺は、
弦一郎や柳生とつるんでいたからか、堅物に見られがちだった。それが窮屈で…お前はいい緩衝材だった」
「物扱いやったんか、俺は」
「お前も大概そうだったんだろう」
また吸い込んだ煙を、今度は俺に向けて吐く。
軽く咳き込んだ俺を、楽しそうに笑った。
突如衝動に襲われて、柳を押し倒した。
「…火傷するぞ」
「お前さんを抱いたら?」
「馬鹿か。煙草だ」
軽い笑いが心地良い。
柳は手を伸ばして、煙草を灰皿に押し付けた。
絡めた舌は、やはり苦い味がした。
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