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□サルビアと夏成り
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※社会人、同棲


コンロの火のせいで流れる汗を拭いながら、カレーを掻き混ぜる。
冷房の温度を下げるのは待つ。あと、もう少しの我慢。

「終わったか」
「ああ、壁までちゃんと綺麗にしたよ」

俺以上に汗だくの貞治が、掃除を終えて風呂場から出てきた。

「ナイスタイミングだ、丁度カレーが出来たところだ」
「いい匂いだ」
「お前の望み通り、少し辛口にした」
「ありがとう」

今日から3日の盆休み。
上手く日程が被った俺達は、はっきりと表さないがお互い浮かれていた。
手早くテーブルをセッティングして、カレーを運ぶ。

「昼からビールか、贅沢だな」
「折角の夏休みだ。これくらい良いだろう」

冷房を、一度下げて。
プルタブを開けて、ビールを注ぐ。

「いただきます」

冷たいビールが沁み渡った。
貞治がカレーを一口食べて、うまい、とはにかんだ。

「デザートにスイカがあるぞ」
「いいね、夏らしくて」

早々と平らげてしまったカレー皿を下げて、スイカと麦茶を持ってくる。
スイカには塩を、麦茶には氷をたっぷり入れて。

「結局いつも、盆休みはどこも行かないな」
「どこも混んでるしな」
「俺は、蓮二とゆっくり出来たらそれでいいよ」
「俺もだ」

照れくさい言葉を、簡単に返してしまう。
これも、夏の暑さのせいだ。

「さぁ、片付けたらお前が借りてきた映画でも観るか」
「ああ、そうだな」
「夕方になったら買い物に行こう。何が食べたい?」
「焼き鳥かな、蓮二は?」
「とうふとおくらのサラダを作ろうと思ってる。あと、とうもろこしが食べたい」
「いいね、あとトマトとチーズ」
「刺身もいいな」
「酒屋にも行こう」
「日本酒か、ワイン」
「どっちも捨て難いな」

昼飯を食べたばかりというのに、ひとしきり食べ物の名を挙げて。
俺達は同時に笑った。

「……楽しいな」
「…ああ」

からん、と氷が鳴った。
夏だ。












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スクエア10月号の乾柳の深い信頼を見せつけられて、このままゴールインすればいい!と思った結果

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