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□世界平和がくるまえに
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※男主の夢です
※前提としてあく→やな










「三津谷は、ずっと何を探してるの?」
「…は?」
「ずっと、ずぅっとさぁ」
「何、言ってんだ?」

突然の彼の質問に、俺は妙な苛立ちを感じた。
テスト前の時間がない時にわざわざ時間を割いて数学を教えてやってるのに、先程から無駄口ばかり叩く。
ある程度の雑談は適当に流していたが、今の言葉は置き去りに出来なかった。
それは、疑いようもなく、図星だからだ。

彼は同じクラスの美術部で、いわゆる変わり者だ。
掴み所がないゆえに、嫌厭する者も多数いるが、俺はそんな彼の特性を気に入っていた。
しかし、その質問に関しては、癪に触ったのだ。

「良く分からないこと言ってないで、早く解け」
「どうやって?」
「xに代入すればいいんだろ」
「なんで?」
「なんでって、yを出したいからだろ」
「なんで?」
「なんでって…」

続けて問われて、答えが見つからないことに絶望した。
解法は分かる。
けれども、その根拠を述べろと言われた瞬間、自分の無力さを思い知った。
何故1+1は2なのか。
何故人は死ぬのか。
そんな問いを投げられた感覚だった。
そこに追い討ちをかけるかのように、

「なぁんだ、三津谷は、解き方が分かってるだけなのかぁ」

放たれた言葉に、ずくり、胸が軋んだ。
彼にはこういう残酷さがある。
純粋ゆえに容赦なく突き落とす性質が、俺は好きだった。
だが、矛先が自分となると、話が違う。

「…お前さぁ、教えて貰っといて、何でそういうこと言うんだよ」
「んー、思ったから」
「…」

屈託のない笑顔が、こんなにも力があるとは思わなかった。
俺は溜息をつく。

「あ、三津谷怒った?」
「…」
「なぁなぁ、三津谷」
「…」
「みーつーやー」
「…」
「三津谷って何回も呼ぶと、甘いもの食べたくなるね」
「…」
「なぁなぁ、これ終わったら、なんか食べに行かない?」
「…いいから早く解け」

反省の欠片もない様子に、怒りを彼方へ手放してしまった。
はぁい、と明るく返事をすると、彼は計算を再開した。

「早く見つかるといいね」
「何がだ?」
「三津谷の探し物」

忘れ掛けていた爆弾に再び火を付けられる。
俺は先程よりも長い溜息をつく。
そうして渾身の力を込めて、彼の頭を思い切り叩いたのだった。











―――――
あくと兄さんを精神的な意味でめちゃくちゃにしたい、と思ったけど適役がいなかったためにまさかの夢。何だか新鮮でした。
一応あく→やな前提なんですが、よく分からない内容になってしまいましたね…

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