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□がらんどうに落ちる水
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※平等院が徳川とリョーマを襲撃した後の話





消灯間近の室内練習場。
軽いクールダウンを終わらせた徳川は、タオルで汗を拭っていた。
そこに静かに現れた人物を、徳川は渾身の力を込めて睨みつけた。

「そんないつまで経っても睨まなくていいんじゃねぇか?」

その矛先、平等院は、やけに楽しそうに笑った。

「…あんなこと、するからでしょう」
「ちょっと久々にからかいたくなってなぁ」
「俺だけならまだいいです。中学生もいたんですよ。まだ一年だし、ああいったことは、」
「ふーん、いつの間にか先輩らしくなったじゃねぇか?」
「…」

受け流される。
その感覚を、徳川は噛み潰す。

「…アンタのそういう所が、嫌いなんだ」
「ん?」
「ちゃんと話をしてくれない」
「そうかぁ?」

人種が違うのかと思うくらい、平等院とは話が噛み合わない。
いや、噛み合っていないわけではない。
根本的に、何かが擦れ違う。
だからこうやって言葉を交わす度に、苛立ちが蓄積する。

「あー、うーん…あ、そうだ、ところで強くなったのか?」
「…当たり前でしょう、アンタを倒すために、やってるんですから」
「そうか、楽しみだな」
「…アンタは俺の、初めての挫折なんだ。だから、絶対に倒す」
「初めての挫折、ねぇ。その歳で知って良かったんじゃねえか?」
「…は?」
「挫折を知らないお坊ちゃんほど、怖いもんはないからなぁ」
「…何ですか、お坊ちゃんて」
「だってそうだろ?」
「…馬鹿にしないで下さい」

徳川は、常時よりずっと低い声を出した。
その変化に平等院が気付いていたなら、こんな関係にはならなかっただろう。

「まぁ何にせよ、俺に負けたことでお前が更に強くなってくれたら、言うことねぇなぁ」
「…いい加減、馬鹿にするのはやめてもらえませんか」
「馬鹿になんかしてないけどなぁ」
「してます」

分からない分からない分からない。
いよいよ徳川の苛立ちは最高潮に到達する。
それを真っ直ぐぶつけることが出来るほど、徳川は勇敢でも愚かでもなかった。
脱ぎ捨ててあった服を手に取り、無言でその場を去る。
とりわけ平等院に、徳川を引き止める気など、さらさらなかった。

「あーあーもう!平等院くんは本当に下手なんだから!」

徳川が去ってすぐに、響き渡ったのは入江の声。
平等院は呆れたように入江を見て、溜め息をついた。

「あとちょっとでいい先輩後輩なのにー」
「そうなのか?それよりいつから聞いてた」
「最初から!あのねぇ、徳川くんは、君と真っ向で言い合いしたいんだよ。なのに君がひょいひょい逃げちゃうからさぁ」

入江の言葉に、平等院はしばし考える。
しかし大した努力もせずに、問題を投げ出した。

「分かんねぇよ、そんなもん。大体俺は今年でこの合宿終わるんだし、もうそんな関わることもないだろ」
「うわー。平等院くんは、本当に徳川くんのことどうでもいいんだねー」
「そういうわけじゃねえけどな」
「はいはい」

嫌に楽しそうに入江は平等院を見る。
そして大袈裟に一つ、溜め息をつく。

「君たちは、潜在的には両想いなのにね」
「洗剤的?」
「あ、今絶対違う変換したね。分かりやすく言い直してあげる。お互い好きなのに気付いてないってことだよ」
「徳川は、俺のこと嫌いって言ったぞ」
「そうだったねー」

からからと笑いながら、入江は踵を返す。

「もう寝るのか?」
「ううん。徳川くんが泣いてるかもしれないから、慰めに行くんだ」
「は?何で泣くんだ?」
「さぁ、何でだろうねぇ?」

ほんと、ばかじゃないの。
入江はそう小さく呟いて、その場を去った。
平等院はその背中を見ながら、気だるそうに欠伸をした。














―――――
なんか根っこがぐちゃぐちゃした関係が書きたかったんだけど何だこれ!ものすごく苦労した割に出来が残念。むむぅ
とりあえずあれです。徳川は平等院に対して愛憎を抱いてるけど無自覚。まだ憎の方が強い、と言う感じの話です。表現力…下さい…
そして入江は野暮が似合い過ぎる

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