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□アンダンテ
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「月光さん、最近元気ないですよね?」

いつもよりほんの少し歩みの遅い月光さんの顔を覗き込んで、そう問いかける。

「そんなことはない」

そう否定するが、俺には分かる。
月光さんの様子には、自分でも驚くくらい敏感だ。

「絶対元気ないですって!何か悩みですか?何でもゆって下さい!」
「……」

月光さんはしばし黙った後、小さくため息をつく。
そして俺の方を向くと、小さく呟いた。

「最近、陸奥兄弟にやたらと絡まれる」
「あ、あー…」

俺は合点し、何回も首を縦に振った。
確かに最近、やたらと陸奥さんたちと一緒にいるのを見る。
かと言って仲良く談笑してるとかではなく、

「別に嫌いではないが、ずっと黙ってそばにいられる。何を話していいか分からない」

…そういう状況らしい。
それは正直困る。というか怖い。

「ここが俺が!ゆったる!」
「…別にいい」
「いーや、月光さんのためやから!」

次に月光さんに近付いた時には俺がズバッと…

「「越知」」

なんて考えていた正にその時、後ろからユニゾンが響いた。
それを聞いてびくっと月光さんの体が跳ねた。
あんな巨体やのにかわええな…いや!今はこんなことゆうてる場合とちゃう!

「ちょっと、陸奥さん」
「あ、毛利」
「おはよう」

おはようございます、と一応返して、ふん、と気合いを入れる。
察した月光さんが、毛利、と小さく呼んだが、ここは無視させて頂きます、すんません!

「月光さんにあんまりつきまとうのやめてもらえません?」

躊躇いなしにそう言うと、陸奥さんたちは無表情を崩さずに俺を見た。
おお…これめっちゃ怖いわ…あかん!怯んだらあかん!

「つきまとってるのかな、これ」
「人聞きの悪いこと言うね」
「つきまとってるんや!特に喋らんのにずっとそばにおるとか質悪いやろ!」
「「……」」

思い切って一気に吐き出すと、陸奥さんたちは黙ってお互いを見合う。
月光さんはどうしていいか分からなさそうに、黙ってその様子を見ていた。
沈黙が流れた後、(恐らく交信を終えた)陸奥さんたちが、俺の方を見て言い放った。

「「だって、なんか好きなんだもん」」

そんなん俺の方が月光さんのこと好きやし!とは流石に言えなかった。
月光さんはと言うと、やはり困った様子で、髪を掻いていた。
陸奥さんたちは再び黙ってお互いを見る。
そして俺をじっくりと見つめ、次に月光さんに視線をやると、一歩近付いて、

「「愛されてるね」」

そう言い残して、その場を去って行った。
俺はやり遂げた気持ちでいっぱいになり、満面の笑みで月光さんの方を向いた。

「もう大丈夫ですよ月光さん!」
「……ああ」

少し頬が赤くなっていることに気付いたが、言わないでおいた。
月光さんは照れ屋さんやから。
足早にコートに向かう月光さんの後を追いながら、俺はニヤケを我慢するのに必死だった。

その後、陸奥さんたちがターゲットを君島さんに変えたそうな。













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友達以上恋人未満な関係
守られることに慣れてなくて照れちゃう月光くんが書きたくて。このあと(毛利にありがとうと言えなかった…)と悩みます
関西人ゆえにたしけの関西弁が分からなかったです。これって言うのか?と悩みながら寿三郎喋らせてました

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