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□ショー・ウィンドウ
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いびつだと思っていた行為に慣れてしまってから、一体どれくらい経つだろう。
触れ合うことの意味を求める以前に、毛利はただ感情的に俺を求めてきた。
抱きたい、と言われても、冗談にしか聞こえなかった。
けれどもいつの間にか、合わないはずの欠片がはまりこんでしまった。

「月光さんの中、気持ちいい…」

毛利は恍惚とした表情で吐息を漏らす。
埋め込んだまま動かずに、毛利は俺の前髪をかきあげた。
晒された瞼に口付けられると、言い様のない感情が支配する。

「なぁ月光さん、何考えてるんです?」
「…別に何も」
「ほんまに?」

意味のない言葉を投げ合う。
少し苦しそうに笑う毛利は、常時とは比べ物にならないほど、色気があった。

「月光さんきれい…」
「…」
「すき…」

独り言のように呟きながら、俺の顔中に口付ける。
舌を絡めると、堪らなくなって毛利の首に腕を回した。
そのままゆっくりと律動が刻まれる。
息苦しくて唇を離し、毛利の肩に顔を埋めた。
穿たれる感覚に耐えながら、毛利の肩に歯を立てる。
すると仕返しとばかりに、耳に舌を捩じ込まれた。

「月光さん…」
「っ…」
「はぁ、きもちい…」

耳に直接吐息混じりの声を流し込まれて、背筋が震えた。
深くじっくりと奥まで押し込まれて、殺した声が漏れそうになる。
加えてわざと音が響くように耳を舐められて、理性を根こそぎ掬われそうになる。

「なぁ月光さん、もっと声聞かして?」

言いながら、また前髪を上げられ、顔が晒される。
それが妙に恥ずかしくて、目を瞑って横を向いた。

「こっち見て?なぁお願いや…」

切羽詰まった声音に、思わず目を開ける。
毛利は安堵した風に、にっこりと笑った。
途端強くなった動きに、歯を食い縛る。

「っ、…」
「苦しない?大丈夫?」
「…」

頷きだけで返事をして、息を吸い込む。
張り詰めた中心を同時に刺激されると、耐えきれずに声が出た。

「っく、…ぁ、」
「月光さん、きもちい?」
「っ、っ、…う、」
「…良かった、気持ちいいんやんな…」

最初に俺を抱いた時、毛利はうわごとのように『標本にしたい…』と呟いた。
その情景がやけに艶めいていて、今でも反芻すると喉が鳴る。
そんな過去を思い出しながら、毛利の目を見た。

「何?」
「いや…」

視線に気付いた毛利が、動きを止めた。
毛利は小さく首をかしげて、髪を優しく撫でた。
大きな体格差による不自然な交わりは、毛利に相当の負荷をかけているらしく、額からは汗が零れ、伝い落ちていた。
何故ここまでして、俺を抱こうとするのか。
そう問いかければ、毛利はきっと、好きだから、と返すのだろう。
『好き』だとか『綺麗』だとか、そんな言葉を毛利は簡単に口にする。
簡単に、と言えば軽率に聞こえるかもしれないが、決してそういうわけではない。
言うなれば、惜しみなく、だろうか。
惜しみなく、そんな言葉をたくさんくれる。
そうして俺はそんな言葉に、自分でも驚くほど弱い。
言葉に殺されるという感覚は、きっとこういうものなんだろう。
毛利に求められれば、いっそ標本にされてしまってもいい。
そんな考えに至るほど、俺はとっくに毛利に呑み込まれていた。

「…毛利、」
「はい?」
「……好きだ」
「……!」

絞り出した言葉に、毛利は顔を真っ赤に染めた。
その素直な反応に、俺はほくそ笑む。
ああ、こうしてまた、この光景が俺を捉えて離さない。
そう自嘲しながら、毛利の上気した頬を撫でてやる。
毛利はその手を取って、甲に口付け歯を立てた。
そして欲で潤んだ瞳で俺を見て、『おかしくなりそう…』と呟いた。














―――――
途中から迷子になった。寿月は掘り下げると難しい気がします。

寿三郎にとって月光くんはショー・ウィンドウの中の存在みたいなものだったけど、そのガラスを割って手に入れたわけで。
けれども月光くんはそんな相手に標本にされたい=ガラスケースに戻されたいという。
何かそういうような意味でタイトルにしましたが上手くまとまってない。

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