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□バガテル
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「俺、月光さんのそういうとこ、嫌い」

メニューの一つである練習試合を終えた後、唐突にそう言うと、月光さんは驚いた風に俺を見た。
前髪に隠れていても分かるその反応に、俺はほくそ笑む。

「優しいと、甘いんは違うでしょ。勝負事に優しさ持ってきたって、しゃあないでしょ」
「・・・さっきの試合か」
「そうです。あれ、絶対向こうのミスやったのに、こっちの失点にして」
「・・・練習試合に、そんなに気を張るな」
「ほら、そういうとこ、甘いんです」

月光さんは、勝ち負けに拘らないきらいがある。
それが俺は気に食わない。

「・・・分かった、今後は気を付ける」
「・・・」

そう応えると、月光さんは居心地が悪そうに黙り込んだ。
立ちこめる不穏な空気は、俺の想定の範囲内だ。
そこに俺は追い打ちをかける。

「月光さん、まさか俺から、嫌いって言われるとは思えへんかった?」
「・・・」
「ちょっとびっくりしてたでしょ」
「・・・」

に、と月光さんに笑みを向けると、月光さんの唇が強く結ばれた。

「月光さんのこと大好きやから、嫌いなとこ、思い切って言ったんですよ」
「・・・」
「そこ直してくれたら、もっと月光さんのこと好きになる」
「・・・」

だからどんどん、俺の好きな月光さんになって?
そう言うと、月光さんは何も言わずに踵を返して歩き出した。
足早に去っていく月光さんに駆け足で追いついて、笑顔で顔をのぞき込む。
想像通り染まった頬に、更に笑みを深くする。
月光さんは小さくため息をついた後、俺の頭を乱暴に撫でた。
















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惚れた弱みにつけ込んで自分好みに仕立てあげちゃうあざとい寿三郎を推します!

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