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□ホワイト・ボックス
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※モブ視点
※齋君前提





『暇だから行っていい?』

家の近さを利用して、君島にそうメールを送ってみる。
どうせテニスの練習やら勉強やら撮影やらで忙しいとか言って、断られるに違いない…一切の期待をせずにベッドに寝転んだのも束の間。

『いいですよ』

素早い返信に、俺は面食らった。












「何してたんだ?」
「別に何も。ごろごろしてました」
「え!君島がごろごろするときってあんの!」
「…何ですか、それ」

自転車で数分。君島の家に到着すると、そんな会話をする。
君島はボーダーのシャツにジャージという、何とも家着らしい恰好で出迎えた。
今まで何回か来たことはあったが、こうも「らしくない」君島は初めてだった。

「誰もいませんから、気にせずに」

自室に通されると、麦茶を出してくれた。
君島の部屋はいつも整頓されている。
けれども今日は、ほんの少し、乱雑に感じられた。

「何かあった?」
「いえ?」
「ふーん、そう」
「何しますか?ゲームとかありますけど」
「ゲームとかすんの?」
「昔はね。ほら、大乱闘」
「懐かし!やろうやろう!」

記憶をたどりながら、何度かプレイする。
二人とも弱すぎてコンピューターに負けたりして、同時に吹き出す。
ひとしきり遊ぶと、君島はコントローラーを置いた。

「休憩しましょうか」

そう言って君島はベッドに腰掛ける。

「あ、そうだ。お菓子買ってきたんだ」
「ありがとうございます」

買ってきたポテチを開け、口に放り込む。
君島もそれを食べ、テレビに目をやりながら、時折携帯を見る。
先程から何度か携帯を気にする仕草が、やたらに染み付いた。

「もしかしてさ、寂しかったとか?」
「…は?」
「…いや、何も」

一瞬瞠目した後、君島はため息をつき、小さく笑う。
そうして携帯をベッドに放り投げた。

「そうかもしれませんね」

柄にもなく素直なその様子に、俺はポテチを上手く咀嚼できなかった。
慌てて麦茶を飲み干すと、「おかわり、取ってきますね」と君島は笑い、その場を立った。











――――――
君島くんは強がりだといい

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