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□落城
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「お疲れ、徳川くん」
「…お疲れ様です」

午前中の練習を終えて部屋に戻ると、入江さんが既に中にいた。

「5番コートになっちゃったー」
「…」

疲労感が残っているらしい左肩をさすりながら、入江さんはやけに楽しそうに言った。

「まだ続けられるのに棄権したって、聞きました」
「修さんの言うことは信じちゃ駄目だよー」
「でも、物足りないのでは」
「いいんだよ、僕はここで」

入江さんは鞄をいじりながら返事をする。
そしてチャックを閉めると俺の方を振り返って、にっこりと笑った。

「若い芽を摘む感覚はたまんないからね」

彼の挑発的な言葉が、俺は好きだった。
悪趣味だと自嘲しながら、入江さんを後ろから抱き締める。

「なに?慰めてくれるの?」
「…」
「ふふ、じゃあねー」

するり、俺の腕から抜け出して、部屋の鍵を閉めた。
そして壁に寄りかかって、腕を組み、片手に顎を預ける。
その計算されたような角度は、いとも容易く俺を狂わせる。

「キスして、徳川くん」

そう命令されて従う俺は、まるで犬のようだ。
また自嘲しつつ、入江さんの頬に手を添え、唇を重ねる。
入江さんの腕が俺の首に回されて、髪を撫でられる。
数回触れるだけのそれを繰り返して、唇を離す。

「舌、」

体を離そうとしたら、入江さんが俺の襟を掴んでそう言った。
ちらりとのぞいた赤い舌に、思わずのどが鳴る。
言われるがままに再度唇を重ね、舌を侵入させる。

「んっ…」

漏れる吐息に背筋が震えた。
ゆるやかに絡むその感覚に酔っていると、入江さんの手が俺の首の後ろを強く押し、自分へと引き寄せた。
そして物足りないように、俺の口内を蹂躙する。
うっすらと目を開けると、入江さんの強い眼差しが刺さる。
思わず目を閉じて、顎を掴んで乱暴に掻き混ぜる。

「はっ…」

ゆっくりと唇を離すと、唾液の糸が橋を作った。
それを入江さんの赤い舌が全て舐め取る。

「ごちそうさまー」

軽やかにそう言うと、何事もなかったように腕からすり抜け、鍵を開けて部屋を後にした。
俺はすっかり上がってしまった息と、湧き上がった熱を持て余したまま、ベッドに身を預けることした出来なかった。







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初徳入。精神的入徳な徳入を推します

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