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□サンクチュアリ
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※二人部屋設定
※齋君前提
「髄分遅ぇな」
「…起きてたんですか」
深夜になってやっと部屋に帰ってきた君島に言葉を吐くと、驚いた風に俺を見た。
「どこ行ってたんだ」
「…練習です」
「ラケットも持たずにか?」
「…コーチに報告に」
「風呂入る必要あんだな」
「…」
いつも余裕をなくさない君島を黙らせたことに、俺は軽い快感を得る。
「…知ってるんでしょう」
「ああ、まぁな」
「だったら、放っておいて下さい」
君島が齋藤コーチと関係を持っていることはとっくに知っていた。
分かってはいたが、言わせてやりたかった。
「やめとけよ、そういうの」
「貴方には関係ありません」
「他の奴にもバレたらどうすんだよ」
「バレません」
「確証あるのかよ?」
「現に私と一番長く一緒にいる貴方が知るまでに、一年は掛かりました。あとは貴方が言わなければ広がる心配はありません」
「何だよ、知れたら俺のせいかよ?」
「そういうことになりますね」
俺はベッドから降りつつ、大袈裟に舌打ちをした。
君島は居心地の悪そうに唇を噛んだ。
「遅くなったことと、嘘をついたことは謝ります。でも、もう放っておいて下さい」
「…」
足早にベッドに入ろうとした君島の腕を掴む。
君島は目を見開いて俺を見据えた。
「どうせ、コーチに取り入ったら有利とか思ってやってんだろ?芸能界でもそうやってのし上がったのか?」
「…」
火を点けようと投げたはずの言葉に、君島は目を伏せた。
暫しの沈黙の後、蚊の鳴くような声で君島は言った。
「…本気なのは、私だけですよ」
思わず手の力が緩む。
寂しげな笑顔に、俺が次の言葉に迷っていると、
「なんて言えば、少しは同情してくれますか?」
一瞬で表情を変えて、楽しそうにそう言ったのだった。
怒りが一気に沸騰する。
「てめぇ…!」
乱暴に襟を掴んで、拳を振り上げる。
「殴るのなら、」
君島は表情一つ変えず、俺を見据えて声を上げた。
「殴るのなら、目立つ部分でお願いしますよ。その方が、貴方の評価が下がりますから」
「てめぇ…言いふらすぞ!」
「どうぞご自由に。どちらが信用度が高いか、思い知るいい機会です」
しばし睨み合った後、乱暴に襟から手を離す。
君島は服を正すと小さく咳払いをして、ベッドに入っていった。
「…下らねぇ奴」
そう言葉を捨てて、俺もベッドに入った。
射抜くような君島の目が脳裏にこびりついて、いつまで経っても離れなかった。
―――――
篤君は齋君前提でもえる
あと君島くんにはとことん性悪でいてほしい