小話
□第一章
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攘夷戦争中、多くの者が目の前で大切な人を殺された。その戦争の傷を今でも胸に抱えている人がいる。
私は今でも忘れない。私を護った母の腕の温もりと、
刀を振りかざした天人を。
第1章 忘れられない記憶
『えーみんなもう知ってると思うが先日宇宙海賊″春雨Wの一派と思われる船が沈没した』
そう近藤さんは話を切り出した。
『しかも聞いて驚けコノヤロー。なんと奴らを壊滅させたのはたった2人の侍らしい・・』
『驚くどころか誰も聞いてねーな』
土方さんは近藤さんの指示で立ち上がった。
ドガン、とバズーカがぶっぱなされ、隊士どもはきちんと正座しなおす。
近藤さんはもう一度言って聞かせた。隊士どもは素直に驚いてみせた。こいつらアホだ。
近藤さんは話を続けた。
『この二人のうち一人は攘夷党の桂だという情報が入っている。まァこんな芸当ができるのは奴ぐらいしかいまいっと・・話の途中だぞ、ごんべ』
『私は今すぐ会いたい奴がいる』
『話の肝はこれからだ。まあ座れ』
私はすぐにでももう一人の安否を確認したかったが、大将の命令に逆らうわけにはいかない。
だが、おとなしく座ったのが間違いだった。衝撃的なことを聞く。
『麻薬の密売に幕府の官僚がかんでいたという噂がある』
幕府の官僚には豚の顔をした天人がいる。
『瞳孔が開いてんぞ、ごんべ』
『・・そんなおっそろしい顔だった?これはいけないわ』
『それは俺への嫌味か?嫌味なのか?』
『真偽のほうは定かじゃないが江戸の散らばる攘夷派浪士は噂を聞きつけ「奸賊討つべし」と暗殺を画策している。俺たちの出番だ!』
話の肝が終わり、近藤さんと土方さんが部屋を出たのに続き、隊士もぞろぞろと部屋を出た。
一人残った部屋で、私は腰にさした刀を鞘から抜いた。銀色に輝くその鍔は私の鋭い瞳を映した。
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