小話

□第二章
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『春の訪れを喜ぶかのように桜が満開ですよ〜』

『そうですね〜。花見をする際は他人に迷惑をかけないようにマナーを守って楽しみましょうね!』


近藤さんの声が玄関から聞こえてテレビを消した。今日はそう、真選組総出の花見だ。



第二章 



『え?みんな帯刀するの?』


遅れて玄関から出た私の前にいる隊士はみな腰に愛刀を携えていた。


『もしものためだ』

『ちぇ、今日だけはいいと思ったのに』

『俺たちは花見客の整備という名目で花見に行くからな』

『それ整備する気ないじゃん』


近藤さんに冷ややかな視線を送った。仕方なくもう一度草履を脱いで自室へ刀を取りに行った。

すばやく刀を取った。


『どこに差そおか・・』


今日は着物を着ていた。男どものように腰に差すことができない。


『おい、早くしろ』


声のするほうを向くと土方さんが襖に寄りかかっていた。


『だってどうやって差そおかと・・』


部屋を見られたからか、突然声をかけられたからか、二人きりだからか、心臓が早い。

自分の心臓の音に気を取られている間に土方さんが自分の隣にいた。


『うわ、なんですか・・』

『は?どっか差せねェか探してんだよ』


探すために私をじろじろと見ている。


『なァ、』

『え』

『何考えてんだ?』

『いや、別に』

『へェー・・』

『なんですか?』


腹が立つような笑み。


『お前、俺を意識してんのか?』


なぜか心臓が一瞬強く脈を打った。


『ば、バカですか?あ、そっか、バカなんですよね。意味分かりません。どうして私が土方さん意識するんですか』


早く逃げ去りたい。体は出口を向く。


『お前俺の顔見なくなったじゃねェか。それって意識してるっつうことだろ。』

『違います!!』

『やっと見たな』


また、心臓が。


『そらすな!』


土方さんが背けようとした私の顔を両手で押える。


『ちょっ!』


私はその手をバシバシと叩く。お願い、離して。


『お前は俺が護ってやるよ。だから刀は置いてけ。いいな?』


動かせない頭ではNOと首を横に振ることができなかった。


『そろそろ行くぞ』


そう言った土方さんは私の手を掴んで歩き出した。

掴まれた右手が痛い。



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