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□play with toys
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次に気がついた時、俺の目の前には見慣れた枕があった。
あー…、俺、どうしたっけ…?
俺が曖昧な記憶を整理するよりも早く、身じろいだ俺に剣城の声が掛かる。


「大丈夫ですか?」

その声が呼び水になって、さっきまであった事を鮮明に思い出した。

お、俺…、俺…、俺ーー!?

さっきまでの自分の醜態に居た堪れなくなって、俺は剣城の言葉を無視して枕に顔を埋めた。
枕に押し付けた顔は羞恥で火を吹くくらい熱いし、それになんだか泣きすぎたせいか目の辺りがシパシパする。
その上、全身が凄く気だるくて、でも腰の辺りだけはやけにじんじんとしている。
まだ過敏なんだろうとか、空っぽになった精子を一生懸命作ってるんだろうとか、
腰周辺がじんじんしてる心当たりが沢山あり過ぎて考えると落ち込みそうだ。
今日こそは、なんて思っていたのに今まで以上の醜態を晒すなんてみっともなさ過ぎる。
剣城と新しい関係を結ぶ為に用意したシーツに、こんな風に包まってる事が一層みじめだった。


「ご両親がいつ帰ってくるか分からなかったんで、部屋まで運びました」

言葉と共に、剣城の手が布団にうつ伏せになっている俺の髪に伸びる。
ピクッと触れられた瞬間、またも俺の意思に反して反応をしめす身体が嫌で、俺はすぐさま剣城の手を振り払った。
この俺に醜態を晒させるような無理を強いた剣城に簡単に触れさせたくなかった。
おれの怒りを察知した剣城は俺にそれ以上近づこうとはしなかった。
剣城の神妙な声がすぐ傍から降ってくる。


「…先輩を疑うような真似をしてすみません」

「……」

…疑う?
…ああ、そうか。事の発端はそんな話だったな。
それどころじゃなくてすっかり忘れていたが、そう言えばそんな事も言っていた。
剣城は俺が好きでも無い奴と付き合うような人間だと思っていたのか。
それで変な道具を幾つも用意して俺にあんな変な真似をしたのか。
よくよく考えてみると、それって凄い俺への侮辱だよな?
なんだか改めて怒りが湧いてくる。


「…許しては、くれませんか?」

「……」

俺が何も言わないでいると、剣城の真摯な声が響く。
一方的に疑って暴走したくせに、すぐこんな風に謝るなんてズルいじゃないか。
まだ俺はこんなにも怒っているのに。

…ずっと許さない、とか。
…出来る訳、…ないじゃないか。馬鹿。


「…掃除」

「え」

「リビングはどうなってる?」

簡単に許してしまうのが癪で、俺はベッドから身体を起こしながらむっつりと訊ねた。
気恥ずかしい気持ちでチラリと横目で剣城を見ると、剣城は何故かまだ上半身裸でもっと恥ずかしくなった。


「汚した箇所は綺麗にしておきました。
…それから先輩も」

う、一言余計だ。
ある条件と引き換えに俺の意思を無視して無茶をした事を許してやろうと思ったのに、機先が削がれる。
剣城の裸と余計な一言に大分気力を減らされたものの、俺はグッと堪えて剣城を呼んだ。
多分今を逃したら、もう次の機会は訪れないかもしれない。
考え方を変えれば、ある意味今は千載一遇のチャンスだった。


「剣城」

「…はい」

「こっち、来てくれ」

壁際に少し移動してベッドに人一人入れるぐらいの余裕を作ると、剣城は訝しげではあるものの素直に俺の隣に寝転んでくる。

「なんですか?」

向かい合って横になれば、すぐさま剣城は甘い雰囲気を出してくる。
ナチュラルに腰に手を乗せている辺りが油断出来ない。
だが、そんな余裕な態度もすぐ出来なくさせてやる。
つまりは初志貫徹!
散々シた後で勃つかどうか不安だけど、これから剣城を当初の予定通り抱いてやる。
剣城の罪の意識に付け入る卑怯な行為だけれども、それぐらい許されるような事を俺は剣城に充分されたと思う。
一方的にしたいようにされた俺は剣城に対してそれぐらいの要求をしてもいいはずだ。
というか、これは当然の権利だ。

俺は覚悟を決めると剣城の肩をぐっとシーツに押さえ込み、剣城の上に跨った。


「悪いと思ってるなら大人しくしろ」

黄門様の印籠並の一言に剣城は一瞬驚いた顔をしたものの、されるがままになっている。
なんだか…、俺に押し倒されているっていうのに全然動じていないじゃないか!
なんでだ!?






 
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