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□difference in age
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「お茶、淹れてきますね」

剣城君は、それ以上特に何かしてくる事もなく、眼力を弱めてほんの少しだけ微笑んで言った。
もしかして俺が許容範囲いっぱいいっぱいであわあわしてるの分かって、少し俺に落ち着く時間くれたんでしょうか?
俺は剣城君がキッチンに消えてくのを見送ってから、ハァーッて盛大に溜息を吐いた。

はあ、それにしてもどうしよう。
剣城君があんな風に考えてくれてたなんて。
俺なんて剣城君が好きって言ってくれたのも実は俺の聞き間違いだったんじゃないかって思ってたぐらいで。
変に浮かれないように、期待しすぎないようにって自分で抑えてたぐらいなのに。
でも、恋人、って。
さっき剣城君、そう言ってましたよ、ね?

………。

うわ。
うわ、うわ、うわ〜〜〜〜!
うわあ、ど、ど、どうしましょぉ〜〜〜!
このシチュエーションって、「アレ」ですよね?

濡れた身体。(雨に濡れたから不可抗力ですけど)

家族が留守で他に誰も居ない家。(剣城君んちはおにーさんは入院中だし、ご両親は共働きで基本的にいつもお留守なんですけど)

愛し合う二人。(こ、これはまだ信じられないですけど…ッ!)

これらの条件から導き出される事と言えば…。

答え:求め合う二人。


きゃあ〜〜〜〜〜〜!!
無しッ!今の無しです!!
あぁ〜、俺、エロすぎですよぉ〜〜!!
頭、沸いてますよぉ〜〜!!
いくら俺がリアル中二で思春期まっただ中だからって、そんな事ある訳ないじゃないですかッ!!
だって俺達まだ手だって握ってないのに!!
デートだってしてないし、登下校を一緒にするだけの仲なのに!!
ごめんなさいぃぃ、剣城君〜〜!こんな妄想して〜〜〜!

あ、でも…。
剣城君さっき「やっと」って。
「恋人(信じられないですけど俺の事)がやっと家に来てくれた」って言ってましたよね。
それってやっぱり俺が相当待たせてたって事ですよね…?
考えてみれば俺、剣城君に恋人らしい事って何にもしてない気が……。


「まだ着替えてなかったんですね」

「わっ」

び、び、びっくりしました…。
急に声を掛けられて、顔を上げたら剣城君がマグカップ両手に持ってすぐそこに立ってました。
剣城君はコトンってマグをテーブルに置くと、俺の方に向かってくる。
う、どうしよう…。
雨に濡れたせいか剣城君、いつもの制服脱いで赤いTシャツ一枚になってる。
しかも腕まくり。
や、やばいぃぃ。
あんな妄想したせいか、やけにセクシーに感じちゃいますよぉ〜〜〜。
直視出来なくて、俺はついっと視線を下に逸らす。


「もしかして俺に脱がしてほしいですか?」

わぁああああ!
ぬ、ぬ、ぬ、脱がすってぇ〜〜〜〜〜!?
いつもの皮肉気な顔に少し甘さをプラスした顔をした剣城君は、ほんとに、ほんとぉーーにセクシーでそれだけで眩暈がしそうなのに!
こ、こ、この台詞!!
はわわわわっ!お、俺、やっぱりこのまま美味しく剣城君に戴かれちゃうんですかぁ!?
そ、それは寧ろ望むところ、こっちからお願いしたいところではあるんですがっ。
でも、でもっ。
俺、なんにも準備してませんし、というかナニを準備すればいいか分かりませんよぉ〜〜〜!!


「そんなに慌てなくても、冗談ですよ」

クスリと笑って剣城君が言ってくる。
じょ、冗談ですかぁー…。
ふしゅ〜〜〜って俺の沸騰した頭から有り余った熱が放出される。
良かった。このままじゃ沸騰しすぎて倒れるところでしたよ。


「…半分は本気ですが」

わ〜〜〜〜〜っ!!
まだ熱の放出途中だったのに〜〜。
俺の頭がまたピーッって限界突破して沸騰していく。
落ち着く途中で再度上がった熱に、もう俺の頭は崩壊寸前。
なんだか身体全体がふわふわと熱いです。
ぐるぐる考えすぎて頭が熱暴走でフリーズしたみたい。

えっと、えっとー、状況を整理すると、
剣城君と俺は恋人同士で、今は絶好のシチュエーションで、それで剣城君はずっと俺のことを待っていてくれた。
って、事ですよね。
で、剣城君は俺の恋人で(ここ重要)
俺は剣城君が大好き。
好き。凄く。
嫌われたくない。
そしたら、そしたら…。


考える必要ってあるんでしょうか?


「あのっ!あの、あの、あのですね?」

「はい?」

か、身体が熱いですよぉぉぉ。
剣城君も俺に告白するとき、こんなに緊張したんでしょうか?
そうだと嬉しいんですけど。


「お、お、お、俺の事っ、す、す、す、す、好きですか?」

びっくりした顔の剣城君。
はわわわわっ、突然こんな事聞いて変に思われたでしょうか?
えっ!え、え、え?
え、なんで俺から顔を逸らすんですか?
浮かれた熱がザーッと一気に引いていく。
もしかして、さっきの恋人発言は聞き間違いですか!?
それとも「恋人だけど嫌いになった」ですかぁ〜〜!?


「あー…、言葉にするの苦手なんで…」

え?え?どういう意味ですか?
俺のフリーズした頭じゃネガティブな意味にしか取れない。
ちゃんと、ちゃんと言ってほしい。
剣城君が一気に青くなった俺をちらりと見て、「チッ」って舌打ちする。
そして今度は横を向いたまま手で顔を覆ってしまう。


「…好き、って事です」

指の隙間から剣城君の耳が見える。
それは色の白い剣城君からしたら信じられないぐらいすごく赤い色をしていて、眼を奪われる。
どうしよう…。凄く嬉しい。
その赤い耳を見ていたら、じわじわって心の底から嬉しくなって、居てもたってもいられなくなった俺は剣城君に抱きついた。





 
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