ほっと
□ある朝、
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寝起きで目をうるうるとさせ、
おそらくなにも考えずに
言葉を紡ぐ。
「…すぐ、帰ってくるから。」
「やぁ…かず…ぅ……っ」
必死に引き留めようと
腕や首に
力の入らない手を伸ばす。
「…翔、ごめんね?
まだ眠いよね?」
それでも緩く首を振るから、
「…も一度寝よ?
起きたら…
きっと、俺がいるから。」
耳元で囁き、
目蓋にキスをする。
すると、
どこか満足そうな微笑みを浮かべ、
翔は目を閉じた。
眠りについたことを見届けてから、
支度を整え、家を出た。
「…寒ぃ」
家に帰ったら、
翔に温めてもらおう。
息も白くなるほど寒い、
でも とても澄んだ
ある冬の朝のこと。
end.