逃避行
□1話
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傷は深く、俺が歩いた後は砂が血で固まっていた。
「おい、まだ、いきてるか、なァ、」
うっすらと目を開ける名前に満足だと笑う。手負いの身体ではなかなか進まない。
「どこに行くんだ」
いけ好かねぇ野郎に会っちまったと、舌打ちしたいがそんな気力も残っちゃいなかった。睨みつければやれやれ、と溜め息を吐くスターク。
「その子も死にそうじゃねえか。……どこに?」
「こ、を」
「あ?」
「コイツ、を……!!!」
助けてくれなんざ言いたくはなかった。2人で死ねるなら良いとさえも思った。だがいざ死にそうな名前を見てしまえばそんな言葉も出てこない。
「お前からそんな言葉が出るなんてな」
「!!!てめ、なに、しやがる、」
「動くなよ」
急に黒腔を開き、俺の腕を掴んだ。何をすると喚けばぽん、とそのまま落とされた。霊子で足場を構築する気力なぞ持ち合わせてもいないのに。
「下の方によー!!なんかあるんだわー!!運が良けりゃ二人共助かるかもしんねーぞ!!!」
馬鹿野郎そんな賭けで俺等を落としたのか。あの
野郎絶対殺す。叫びたい気持ちを堪え、二人で落ちていった。
どこまでも暗いそこは、名前の温度を奪うのには十分で。遠くに光が見える。
はやく、はやくしなければ