逃避行

□1話
1ページ/7ページ

傷は深く、俺が歩いた後は砂が血で固まっていた。


「おい、まだ、いきてるか、なァ、」


うっすらと目を開ける名前に満足だと笑う。手負いの身体ではなかなか進まない。


「どこに行くんだ」


いけ好かねぇ野郎に会っちまったと、舌打ちしたいがそんな気力も残っちゃいなかった。睨みつければやれやれ、と溜め息を吐くスターク。


「その子も死にそうじゃねえか。……どこに?」
「こ、を」
「あ?」
「コイツ、を……!!!」


助けてくれなんざ言いたくはなかった。2人で死ねるなら良いとさえも思った。だがいざ死にそうな名前を見てしまえばそんな言葉も出てこない。


「お前からそんな言葉が出るなんてな」
「!!!てめ、なに、しやがる、」
「動くなよ」


急に黒腔を開き、俺の腕を掴んだ。何をすると喚けばぽん、とそのまま落とされた。霊子で足場を構築する気力なぞ持ち合わせてもいないのに。


「下の方によー!!なんかあるんだわー!!運が良けりゃ二人共助かるかもしんねーぞ!!!」


馬鹿野郎そんな賭けで俺等を落としたのか。あの
野郎絶対殺す。叫びたい気持ちを堪え、二人で落ちていった。


どこまでも暗いそこは、名前の温度を奪うのには十分で。遠くに光が見える。


はやく、はやくしなければ
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ