逃避行
□1話
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見えた光の中はひたすらに青かった。
「なんだ、ありゃあ」
虚圏に水はない。あれは……そう、海。だが海と言うのはあんなに青かっただろうか。
それ以外は、なにもない
「!おい、名前、!ぐっ、」
傷が痛む。名前の温度が、低くなっていく。
俺に運はなかったか、因果応報か。
「くそが……っ!!」
ただ最期まで抱いていよう。存在はかけ離れていようとも、魂までもが離れぬように。
「おい、なんか落ちてるぞ!」
「なんだありゃあ」
「人みてーだ!」
「人ぉ?」
「ここに落ちてくるみたいね?」
「「「……」」」
下になにか見えた。一体あれは……解らない。だが、もうそこしか降りる所はない。走る力などないのだから。
勢いよくそこへ落ちれば何匹かの人間に囲まれる。武器を向けられようが、今更何を恐れることがあるのか。
「こい、つを、生かせ……!!!!」
「!!?」
「はやく、、しろ、コイツを、コイツの、傷を治せェ!!!!」
最後に俺の目に写ったのはこち
らに走り寄るなにかの動物だった。