逃避行

□1話
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「名前!!!」


ノイトラだ。と身体を起こせばさっきのトナカイ?鹿?さんに「身体動かしちゃ駄目だ!」って言われたからもう一度横になる。


「名前、名前、おい、具合は、おい、」


肩を掴む手が痛い。柄にもなく心配しているらしい。手を貸して、と掴む手を握れば力が抜ける。


『“大丈夫 あのこが 手当て してくれた”』
「……そうか」
『“ノイトラ 傷 は?”』
「……霊子濃度が虚圏よりも濃い。すぐに治っちまった」
『“よかった”』
「何が良かったって?……なんで間に入った、名前。あんな事すれば人間のテメェは簡単に死ぬ事くらい解ってただろうが!!」


睨めつける目がこんなに愛しいとは思わなかった。あぁ、私は生きている。そう、虚圏に行く際にある程度の霊圧に魂が潰れないようにノイトラの霊力が私には流れている。きっと、ここに来た事でその影響が私にも現れたのだろう。


『“いきてるよ”』
「……」
『“ここにいる”』
「……」
「もう休ませてやれ、まだ血が足りてないんだ」
「……」

大丈夫、もう傷は安定してる。心配ないぞ 」
「…………チッ!!!」


盛大に舌打ちをしてからノイトラはずかずかと部屋から出ていった。苦笑すれば動物さんが布団をかけ直してくれた。


『(ありがとう)』
「もしかして、声出ないのか?」
『(うん)』
「悪い、配慮出来てなかった。」


大丈夫だと首を振った。随分可愛い動物さんである。


「なぁ、お前、俺の事怖くないのか?」
『“どうして?”』
「俺、トナカイだし、喋るし……」


トナカイだったか。とりあえず首を振る。そんな事で怖がっていたらノイトラを目にしたら心臓麻痺で死んでしまうだろうに。


『“怖くないよ”』


嬉しそうにわらってた。
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