クローズ、worst

□届かない手
1ページ/2ページ

また助けられなかった




「頭ぁー!!!!」




頭を助けられなくてもう"15回目"だ
どうしても何をしても、鉄生の兄貴はバイク事故に合う。
スクラップ置き場から出る時間を変えても、違う道から行っても、将太の兄貴に迎えに来てもらった時は二人とも死んだ。

俺は頭を救えないのか?
あの悪夢を何度見ればいいんだろう



ほら、また巻き戻ってる



スクラップ置き場に来た時から始まって、俺はもう何をしても変わらないんじゃないかって思い始めた。

この回は普通に過ごした。俺がサンドバッグを打っていると頭が話しかけてくるんだ。


「よー将五!」
「…はい」
「お前最近気合い入ってるじゃねーかよ。なんかあったんか?」


前の俺なら同世代の、月島花や月本光政のことを思い出して、それで気合いを入れていて
今じゃ頭を助ける事に精一杯なんすよ





「お前は死ぬなよ」






「…え?」
「なんでもねーよ!まァがんばれや七代目!」
「、え?」



今、頭はなんて言ったんだ?小さく呟かれた言葉は俺に
届かなかった



頭の単車が広志さんの単車だと解っている俺は今回は何も言わなかった。ちいさなズレでもいいから起きて欲しかった。



「やーオレの愛車サンダーニ号修理に出しててよ!」



…ダメなのか?今回も俺は目の前で頭が大学生の車に轢かれるのを見なきゃいけないのか?



「頭ぁー!!ヘルメット!」
「ねぇーよ!!」
「俺あるんで!今日はしてください!!!」
「いらねえよ!」
「してください!!!!」
「お、おう」



最初からしていた事だ。あの時、頭はヘルメットをしてなかったから、少しは変わるかと思った。実際、変わらなかったけど。



「なぁー将五」
「はい」
「見てみろよ、いい月だぜ」



確かに綺麗な月だった。満月が俺達を見下ろしていて、最初だったら素直に眺めていたかも知れない。

今の俺にとっては、頭を奪った物の1つにしか思えない



「あの月だってかなしーんだぜ、将五」
「、はい?」
「単車にだって月にだって、お前にだって、なにも罪はねー。恨んでやるな」
「…頭、?」
「全てはお前次第なんだ」





また頭が呟いて、こんな事あったか?と考えて、それが全てを悟ったような言い方で俺は尚混乱した。


そして、また運命の時間がくる。




あそこの信号だ、あそこの信号で酔っ払った大学生の車に頭は轢かれる。毎回俺は目の前でそれを見ていた。

どうしたら助けられるのか、どうしたら頭は死なないのか



そうだ、先に俺が死んだらどうなるんだろうか


本来なら頭の前を走るなんて有り得ねー事だけど。



「将五?!」



車が目の前に



俺の意識は飛んだ

















また俺は頭を助けられなかった




→鉄生目線
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ