クローズ、worst

□もしこれを愛と呼ぶならば
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私には所謂世間一般で恋人と呼ばれる存在がいる。紛れも無く私も好きだったし向こうから告白された時は多少は驚いた。私は告白しようがなにしようが、好きでいようと決めていたのだから。

ただ付き合って五ヶ月という短い期間の中で解ったのは彼、村田将五は愛に飢えていた。口に出るのは「俺のこと好き?」か「愛してる」のどちらかが多い。私はそれに曖昧にしか返せなかった。

ここで皆さんに聞くが、好き?と聞かれて何故わざわざ好きと返さなければならないのか。好きじゃなければ付き合うことに了承しないのだから、好きに決まっている。
確かに言葉がなければ不安にもなるかもしれない。だが私は言葉より行動なのだ。全力で彼を好きだという行動はしているつもりだ。現に彼の多すぎるメールだって時間が空いたとしても必ず返すしデートの約束は私からだってする。

何故、彼は安心出来ないのだろうか


「名前、」
『どうしたの?』
「…いや、なんでもねぇ」


腑に落ちない。言いたいことがあればなんでも言えばいい、嫌うことはない。私だって思ったらすぐ言ってるだろう。


「それでも、不安なもんは仕方ねえだろ」

『まぁ、関係をあまりにも拗らせる事は言わない方がいいかもしれないけど』


私を背中から抱き締める彼は気付いているのだろうか。

彼自身から立ち込める悪臭に。混ざった香水の香りに。私が気付かないとでも思っているのだろうか。

彼の香水とは確実に違うと断言出来る。何故なら私があげた香水を非常に喜んで毎日コイツが付けているから。その香りにナニカが混ざって悪臭を放っているのだ。

まどろっこしいのは嫌いだ。でも柔らかく言うことは出来る。
そう言えば私が将五とあまり話さなくなったのはこの香水を気にしていたからか、じゃあ仕方ない


『その香水は誰の匂い?』
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