休暇なう
□ろくわ
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「……なあ、すげー叫び声みたいなの聞こえないか?」
「いや、別に」
「俺も聞こえたぜ」
「俺も」
「……」
サッチの目線は名前を、正しく言えば名前に入った義魂丸のスリーピーを見張るポチ、オビティースにあった(ポチの本名を覚えている人がいるかは不明だが)。
「(……夢、じゃねえよなぁ)」
サッチは先日から不思議な夢を見ていた。非戦闘員の名前が、不思議な化け物のようなモノと対峙している夢だ。そして自分はそれから離れるように名前に叫ぶが、名前が不思議な物をこちらに向け……そこでいつも目が覚める。
ウトウトしている名前をオロオロしながら見ているその化け物には敵意は感じられない。……名前は、一体何者なんだ?
そう言えば今まで気にはならなかったが思えば不思議でならなかった。名前と出会ったあの島に行く時なんかモビーはあの島に行く予定はなかった、食料もなにも補充は十分で、ログポースは違う島に向いていた。なのにグランドライン特有の意味不明な天候により目の前にあった島に
寄る他なくなってしまった。
示し合わせたかのように『この船に乗りたい』としつこく親父に申し込む名前。一般人である、彼女が。
なんの目的がある?わざわざ白ひげに乗って、なんの用がある。
少なくとも名前が乗って4ヶ月近いが、助かっているのは事実だ。溜まっていた書類の山はすぐに片付きマルコも助かると喜んでいたし医療の経験があるのか船医やナース達も、調理の速さも腕も申し分なくこちらも助かっていた。それどころか親父と酒の事や知識の豊富さからか話が合い親父も楽しそうだし、船医も病状が少しずつ良い方向に向かってるとも言っていた。全て名前が乗ってからの変化だ。
それだけに何か企んでいるとは考えたくもないが、用心に越したことはない。
「?」
「!!」
「サッチ、どーしたんだ?」
「い、いや、なんでもねぇよ」
ずっと名前を見ていた化け物がくるりとこちらに振り向いた。ジーッと見つめてくるその姿に危うく声を上げかけたが、どうにか抑えた。
なんだよ、と見つめ返せば今俺が手に持っているオレンジを見ているようだ。
「ソレ、ウマイ?」
化け物の口に合うかは解らないが、美味いと思う。軽く頷けば手を伸ばしてきたのでこっそり渡せば皮ごと食ってしまった。苦くねえのか。
「ウマイ」
ニンマリ笑ったそれに緊張が解けてしまったのは言うまでもない