リボーン 隅っこ

□断章―つぎはぎ人形
1ページ/6ページ



並盛の、黒曜とは反対方面にある隣町

そこの路地裏に、ひっそりとその喫茶店は建っている


人通りの多い商店街から、少年は路地裏へと入っていった







喫茶、つぎはぎ人形



カランコロン…


来客の証のベルが鳴る
いつ聞いても綺麗な音だな、と少年は思った


最初は、見知らぬ町で迷子になり焦っていた時に見つけ、名前が気に入って入っただけの場所だった

だが5ヵ月程前に飲んだコーヒーが案外美味しく、今まで何回か来ていた



「あ、秘密くん!」


カウンターで茶色の髪をポニーテールにした女性が少年に声を掛ける


子供のような無邪気な顔で笑うその女性に、少年は微笑を浮かべた



「こんにちは、佳瑠さん」



後ろ手に扉を閉め、カウンターに座る

秘密くん、とは名前を教えない自分に彼女が付けたあだ名である

少年は店内を見渡した


あまり広くはないが、狭い訳でもない

小さな机が綺麗に並べられた店内は、まるでがらんどうだった


「今日は、人いないんですね」

「そりゃま、雨だからね
秘密くんこそ、こんな日によく来たね?」



今日は酷い雨だ。傘を差しても濡れてしまうぐらいの日に、わざわざ喫茶店に来る人間はいないだろう

少年は苦笑した

「気まぐれです。雨が降ってようが寒かろうが、コーヒーが飲みたくなれば来ます」


ここのコーヒーが1番美味しいので、と付け足せば、佳瑠は嬉しそうに笑った





「…そういえば、秘密くんって何処に住んでるの?
こんな日にわざわざ来て遠い所だったら、私罪悪感たっぷりよ?」


冗談のつもりで佳瑠は言う
町の中でも目立たない隠れ家的な喫茶だ。遠くから来る訳はないと思っていた

だが、それだったらトランクを持っているのはおかしい…とも思ったが、ひとまず答えを待つ
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ