リボーン 隅っこ
□断章―つぎはぎ人形
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並盛の、黒曜とは反対方面にある隣町
そこの路地裏に、ひっそりとその喫茶店は建っている
人通りの多い商店街から、少年は路地裏へと入っていった
*
喫茶、つぎはぎ人形
カランコロン…
来客の証のベルが鳴る
いつ聞いても綺麗な音だな、と少年は思った
最初は、見知らぬ町で迷子になり焦っていた時に見つけ、名前が気に入って入っただけの場所だった
だが5ヵ月程前に飲んだコーヒーが案外美味しく、今まで何回か来ていた
「あ、秘密くん!」
カウンターで茶色の髪をポニーテールにした女性が少年に声を掛ける
子供のような無邪気な顔で笑うその女性に、少年は微笑を浮かべた
「こんにちは、佳瑠さん」
後ろ手に扉を閉め、カウンターに座る
秘密くん、とは名前を教えない自分に彼女が付けたあだ名である
少年は店内を見渡した
あまり広くはないが、狭い訳でもない
小さな机が綺麗に並べられた店内は、まるでがらんどうだった
「今日は、人いないんですね」
「そりゃま、雨だからね
秘密くんこそ、こんな日によく来たね?」
今日は酷い雨だ。傘を差しても濡れてしまうぐらいの日に、わざわざ喫茶店に来る人間はいないだろう
少年は苦笑した
「気まぐれです。雨が降ってようが寒かろうが、コーヒーが飲みたくなれば来ます」
ここのコーヒーが1番美味しいので、と付け足せば、佳瑠は嬉しそうに笑った
「…そういえば、秘密くんって何処に住んでるの?
こんな日にわざわざ来て遠い所だったら、私罪悪感たっぷりよ?」
冗談のつもりで佳瑠は言う
町の中でも目立たない隠れ家的な喫茶だ。遠くから来る訳はないと思っていた
だが、それだったらトランクを持っているのはおかしい…とも思ったが、ひとまず答えを待つ