赤い稲妻と黒い炎
□第2章、つきまとう暗雲
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9.たたかう事
――彼には、かなり長い間気になっていた事があった
彼らがここに入隊してすぐの頃、彼女に聞かされた話
だが、どうにも様子を見ていると話と違う
“戦う事なんて、本当に無い”
確か、彼女はそんな風に言っていたと思う
だが、任務でも援護をしているらしいし、最初に戦力を見た時もしっかり戦っていた
普段忘れていても、ふとした時にぐるぐると渦のように回転するこの疑問が、
ルッスーリアにはあまり好ましくなかった
当の本人に聞こうにも、何故か適当な理由を付けてかわされている気がする
ならば彼女に、と思って聞いてみたのだが、わからないと首を振られてしまった
今日その疑問がふよよ、と嫌な効果音付きで舞い上がってきたのは、
任務帰りの夜の事だった
*
(ゼオンちゃんが戦う事は本当に無いって、
クロルちゃん本っ当に無い感じで言ってたのにねぇ)
報告書を提出した後廊下を歩いている時にふと思った内容
あぁ、また…と気付いた時には考えはまたぐるぐる回り始めていた
深夜のアジトは、日中に比べて静まりかえっている
気分も冷たく、静かだ
考え事には最適かもしれないが、何しろ任務帰りだ
あまり頭を使う事は遠慮したい
“長年一緒にいた筈のクロルが言っていたのに、何故ゼオンは戦っているのか”
暗殺部隊の人間としては、馬鹿馬鹿しい考えだと一蹴してしまいたい
だが、正直な話彼らは異端だ。いや、幹部が皆変わっているのは承知済みだが
とにかく
そんな馬鹿馬鹿しい考えが長い間ずっと頭に住み着いている事から、
自分の中では馬鹿馬鹿しくないのかもしれない