赤い稲妻と黒い炎
□第4章、近付く
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21.夢という現
「…まずは、アイの過去から…だね…
クロルの話は……その後…」
「1番始めに、言っておく事…
アイの――――――…」
*
「嘘だっ!!!!」
頭に残る映像に必死に首を振る。あんなの、嘘だ、信じない
アイは、知られたくなくて…!知られて、拒絶されるのが、嫌で…!
思い出したくなくて
そう思って今まで過ごしてきたのに、
教えてしまうなんて!!
どうして?彼らは、信頼に足る人物だとわかったのか?
何で、どうしてこんな未来…!
「嘘だ、嘘だ、嘘、あれは嘘、あんな事ッ!!」
「あってたまるかッ!!」
嫌だ、嫌なんだ。あんな事を、思い出すのは
また経験するのは
こんな事になるとわかっていたのなら、ヴァリアーに入りはしなかった!
終わった。これは確実に起こる事
アイは、何か失敗をして…幹部全員に、全てを話す
何故か医療室に集まる幹部に話そうとする自分の顔は、
全てを諦めていた
この運命からは、逃れられないんだ…
ベッドに体を投げ出すようにして倒れた
空しく広がる暗闇に身を浸すと、涙が溢れてきて
「うぅっ……くそっ…くそ…!うっ、あ……ひっ、く……」
今までのは全て、水の泡だったんだ
クロルのいない部屋で、独り、泣きじゃくる
溢れる涙はシーツを濡らす
一瞬にして、ぎりぎりのところにあった精神状態が何処かに落ちた感覚だった
――アイの意識はそこで切れた