□病弱少女と薬屋さん
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私は、身体が弱い。


病弱少女と薬屋さん


私が部屋で横になっていた時、バルコニーの方から物音がした。

顔を向けると同時に、窓が開いた。


「名前ー!身体の調子はどう??」

「クルト兄様…またそのようなところから入って、おじい様に怒られてしまいますよ?」

「大丈夫だって。」


よいしょ、と窓から部屋に入って来た。

極まり文句のように注意するがもう慣れた。いつも同じように入ってくるから私はいつでも入れるよう鍵をかけずにいる。

そもそもあのクルト兄様が普通にドアから入ってきたらそちらの方が驚きだ。


「クルト兄様、またお外の話をして下さいますか?」

「うん!」


私は小さな頃から病弱で、あまり外に出る事が出来なかった。
庭くらいしか出られないものだから、私の見える景色、感じる景色はとても狭い。

だからこそ、クルト兄様が毎日のように来ては外であった事を話してくれるこの時間が大好きだ。


「あっと…そうだった。名前、これあげる!」


クルト兄様は一通り話すと、何かを思い出したように小さな紙袋を差し出した。


「薬、良く効くって評判なんだ。」

「…お薬は、お医者様に頂いていますよ?」

「でも、最近のどの調子悪いでしょ?」


クルト兄様はよく見ていてくれる。
私はその厚意に感謝して受け取った。


「そこの薬屋ね、俺が薬草を売りに行ってる所なんだ〜」

「そうだったのですね。」

「うん。あ、そう言えば…

そこにさ、"シルビオ"っていうのが居てね、シルビオが名前に会ってみたいって!」

「私に…ですか?」


うん!と元気に返事をするクルト兄様。

私に会いたいってどういう事なんだろう…?
もしかしてクルト兄様の妹はよく似て変な人だ、とか誤解されているのでしょうか??

考えても答えは一向に出なかった。


******


今日は少しだけ身体の調子が良くなり、久しぶりに庭で花の世話をしていた。

クルト兄様からもらった薬はとてもよく効いて、薬を飲んだ次の日にはもうのどの調子が良くなっていた。

クルト兄様と薬屋さん(シルビオさん…でしたっけ?)に感謝をした。


しばらく庭に置いてもらった椅子に腰かけていると、急に茂みが動いた。

びっくりしてそこに注意を向けていると、黒猫が姿を現した。


ほっと胸を撫でおろす。


黒猫は首にスカーフを巻いていてとてもおしゃれだった。

黒猫は足音も立てずに私に近づいてきた。

私の足元まで来て口に咥えていた紙袋を下す。


「にゃーん」


猫は私を見上げて鳴き声を上げた。


「…?それは、私に…ですか?」

「にゃーん」


返事をするように鳴く黒猫。

その紙袋は、クルト兄様から頂いた薬の紙袋と同じものだった。

私は椅子から下りて「ありがとう。」と黒猫の頭を撫でてお礼を言った。


袋を開ければ、小さな薬の瓶。

そして、一枚の紙が入っていた。


[お大事に。]


たった一行、丁寧な字で書かれていた。

一言だけど、その手間が嬉しくて


「…はい。」


思わず笑みをこぼしながら、言った。

満足そうに鳴く猫をそっと撫でる。


身体の調子が良くなったら、クルト兄様に薬屋さんに連れて行ってもらおう。

シルビオさんに、お礼を言うために。



end

あとがき

青燕様のリクエストで、甘いシルビオ夢です。

え、シルビオが出てませんよ???
猫では出ましたが…あれ?これってシルビオ夢でしたよね???

甘、というかほのぼの微甘になりました…すみません。
私は甘いのがうまく書けないようです。(連載の方もなかなか甘くなりません。)
ああ、ちゃんと書けるようになりたいです…。
まだまだ精進しなければ…!!


青燕様、いかがでしたでしょうか?
リクエストにちゃんと答えられてないような気もしますがとりあえずこれはこれで上げようと思います。

リクエストありがとうございました!
またよろしければリクエストお願いいたします。

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