ちぇんじ!
□第二話
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『ボクの言う通りにして』
カタルは何処からか取り出したスケッチブックに書いて見せた。
どういうことか分からないが、逆らった所で意味が無いだろう。
カタルはさらさらとペンを走らせた。
『あなたは天涯孤独で行き場のない子供です。この家に住まわせて貰いましょう』
「はぁ!!?」
「うわ!!!」
カタルの素晴らしく満面な笑みが酷く憎く感じた瞬間だった。
(家に住まわせて貰いましょうって…そんなこと出来るわけないでしょ!!!?)
「ど、どうしたんだい?」
「あっ、えっと……何でも、ないです……すみません」
はは…と苦笑いを浮かべ、もう一度カタルを見ると、スケッチブックに新たな書き込みをしていた。
『とりあえず自己紹介』
語尾にハートをつけて書くものだから、思わずこめかみがピクピク動いてしまった。
しかし助けてもらって名乗らずに居るのは失礼なので自己紹介に移った。
「あの、改めて、助けて頂きありがとうございます。私は黒崎真琴と申します」
「ああ、丁寧にどうも、黒崎君だね」
そう言い握手をする。
早雲はなかなか優しい人なようで、真琴は少し安心した。
だが、余計に騙すことに抵抗を感じてしまった。
(…どうしよう……これ以上天道さんに迷惑をかけるのは気が引けるな…
でも、カタルの言う事を聞かないというのは、それはそれで後が怖い気がするし…)
うんうん悩んでいると、襖の向こう、廊下からバタバタと足音が聞こえてきた。
「ただいまー風呂風呂っと…ん?目ぇ醒めたのか」
「おー乱馬くんおかえり
今目が醒めたところだよ」
へー、と少女__早乙女乱馬は真琴から目をそらさずに呟いた。
お下げ髪に、中国風の服装__見覚えがあった。
真琴は、彼女の名前を記憶から呼び覚まそうとする。
(えっと、えっと……さ、さ…)
「早乙女乱馬!!」
「へ??」
「乱馬くん、知り合いかい?」
「いや…見たことない顔だ」
どっかで見たことあったかなー?とうんうん唸りながら考えている乱馬に、真琴は慌てて付け足しした。
「いや、あの、会った事はなくて……話を聞いた事があって」
「ふーん…」
あはは…と苦笑いを浮かべる。
我ながら誤魔化すのが下手だと思う。
「えっと、私は黒崎真琴です。真琴で良いから、よろしく」
「真琴か、よろしく。おれの事も乱馬でいーぜ」
「うん、よろしくね、乱馬」
乱馬とあいさつを済ませてから、真琴はさりげなくカタルを見やった。が、
彼女は『なんとかして家に住まわせてもらいましょう』と書いたスケッチブックを見せるだけだ。
(なんとかしてって、どうしたら良いのさ……)
こうして考えているだけでは意味がない。
カタルの言うには、これは運命というものだ。
ならば、この運命に従おう
真琴はゆっくり2人の顔を見て、口を開いた。
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