王子と王女と婚姻話

□第十話
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__近づいても良いのか__


今俺の中ですごい速さで自分会議が行われてる。

ミシェルは今の俺にとって結構親しい友達だ。
出来るならボロが出る前にここから離れたい。
しかもミシェルはなんだかんだで勘が鋭い。
もし気付かれたりしたら当分このネタで弄られる。絶対に。

人の言葉が分からなかった。

そういう言い訳が通用するから動物は良いな。
よし、出て行こう。と思った時、ミシェルの手に包帯が巻かれていた事に気付いた。

怪我をしている事が分かると途端に心配になった。

俺はやっぱり近くで様子を見よう。


そう決意したのに近づく事が出来たのはミシェルの手がギリギリ届く範囲まで。
こういう所が意気地無しだと思う。


(こんなことなら最初から近づかなければ良かったんじゃねーか…?)


ふと残念な考えが浮かぶ。
するとミシェルが「触っても良い?」なんて聞いて来た。


(良いわけあるか!!!)


と思っていても言えるわけがないわけで。

ティアナにも良く触られてるし良いんじゃないか?なんてふざけた考えも過ぎってきて

今日だけで俺はどれだけ悩んでんだろう。

いつの間にか考える内容が変わっていた。
もう面倒くさくなって一歩前に出る。


「ありがとう。」


いつもは滅多に見せない笑顔を簡単に見せた。

こんな風に喜ばせる事が出来るなら、アヒルの姿も悪いもんじゃないと思う。ティアナ然りミシェル然り。

ミシェルは俺の体を持ち上げて膝に乗せる。

(こんな風に無防備で良いのか!?
もう少し警戒しろよ!!)

まあアヒルに対して警戒するような人は少ないだろうが。

しばらく頭を撫でていたかと思うと(意外とミシェルも撫でるのが上手かった。)、急に俺を目線の高さまで持ち上げた。

間近で見つめ合う。

(まさか…バレた!?)

最悪な結果を予想する。


「あなた、ルシアに似ているのね。


…ルシアだったりして。」


…バレたああああ……


「なんてね、そんなのあるわけないよね。」


良かった…!!


ミシェルの言葉に一喜一憂してしまうのがすごく悲しいが兎に角バレなくて良かった…!本当に良かった…!!!

俺がホッとしているとさっきまでくすくす笑っていたのに急に静かになった。
そっと俺を自分の膝の上に下ろすと溜息をつく。


「ルシア…どこにいるんだろう…。」


どきりとする。
何せ当の本人が今目の前にいるのだから。

俯いた顔が、とても心配そうに歪んでいて


こんなに心配させていると思うと胸が痛む


手を伸ばそうとして今の自分には不可能だと気付く。
人間ならこんな状況なら頭を撫でて慰めてやる事が出来た。
「ここにいる。」と不安を取り除いてやる事が出来た。

何もできないのが歯痒かった。


怪我をしているミシェルの手を、自分の羽でそっと撫でる。
きっと今の自分にできる精一杯の事。

こんなことしかできないのが恥ずかしくて俺まで俯いていると、ふっと体が宙に浮いた。

ぎゅっと身体を抱きしめられる。


「ありがとう。」


腕にかかる力が強くなって正直に言うと少し苦しい。
しかし触れている体から伝わる温もりがとても落ち着く。


もし少しでも元気を取り戻してくれたなら嬉しい。

しばらくこのままじっとしていた。



To be continued


あとがき

アヒルの時のルシア視点がやってみたかった。
それだけです。他意はないのです。

ルシアはすごく良い子だと思います。
誰かが不安そうだと自分まで心配しちゃうような良い子だと思います!!

そろそろルシア→ティアナも変わっていってほしいですね。
そうじゃないと話にならな…げふんげふん。

読んで下さってありがとうございました!
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