王子と王女と婚姻話
□第十五話
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***ルシア視点***
ミシェルが使用人に連行されて(この表現は間違っていない。)もう30分が過ぎた。
いつまでも戻ってこないためイラつき半分心配半分で待っている。
連れて行って良いと許可を出したエリクも少し心配しだしている。
「ねえルシア、ミシェル姫遅いね…何かあったのかな?」
「俺は知らねーよ…。」
うーんと唸りながら考えるエリクを放って扉の方に目を向ける。
その時、扉が開いた。
戻って来たか__と思った時、使用人の後ろから入って来た少女に思わず息をのんだ。
気品の感じる立ち姿、大人っぽい雰囲気と恥ずかしそうに頬を赤らめて俯きがちになっている姿とのギャップに胸が高鳴る。
俺やエリク、他の使用人達の注目を浴びて、顔を上げた時に見えた瞳は羞恥心からか少し潤んでいるように見えた。
「あ、あまり見ないで下さい…恥ずかしいです…」
その声はとても聞き覚えのある澄んだ声で
栗色の髪を見たときまさかとは思ったが、あまりの変化に驚いた。いや、惚れ直したというのだろうか…
「わあ!!ミシェル姫すごく可愛いよ!」
「あ、ありがとうございますエリク殿下。」
「一瞬見違えたよ!」といつも以上にニコニコと話すエリクに、恥ずかしそうに礼を言うミシェル。
エリクやミシェルについて来た使用人達に囲まれて少し混乱気味になっている。(使用人達のミシェルの褒め方が異常だった。)
ふと俺の方を見たミシェルと目が合った。
いつだって可愛いと思うのにこんな風に着飾るミシェルを見るのは初めてで、
しかも目が合った瞬間に恥ずかしそうに目を背ける姿があまりにも可愛くて、
心臓が爆発するんじゃないかと言うぐらい暴れる。
「あ、あの…。」
気がつけばミシェルがすぐそばまで来ていて、目をそらしていた俺は少なからず驚いた。
「その…ど、どう思いますか…?」
上目遣いで見るミシェルに、余計に心臓が跳ねる。
俺の答えをじっと待つミシェルの手はかすかに震えていた。
さらに周りの奴らは遠巻きに生温かい目で見ている。
お前(ら)は俺を殺す気か!!(色んな意味で。)
「ど、どうって…
…可愛いと思う。」
語尾が小さくなっていく俺は甲斐性が無いと思う。
しかしミシェルには俺の言葉が聞こえたみたいで、
「…良かった…!」
ふわりと笑った。
軽やかな足取りで取り巻きの中に戻っていくミシェル
「そろそろ絵描かせてもらっても良い?」
「は、はい!」
絵を描こうと人が流れるように移動していく中、俺はミシェルから目を離せなくなっていた。
そっと触れてみた頬は思った以上に熱くなっている。
「…あれは、反則だろ………」
にぎやかな部屋に俺の呟きはかき消された。
やっぱり、ミシェルはいつも通りが良い。
(いつもこんな格好されたら、俺の心臓が持たない。)
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