王子と王女と婚姻話

□最終話
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頭が重い


身体が熱い



「…ん、あれ…?」


目を覚ますとよく見慣れた天井が目に入った。


「ミシェル様!お気づきになられたのですねー!!」


ミシェルが丁度起き上がろうとした瞬間、使用人達がタックルに近い勢いで抱きついて来た。

あまりの使用人の感激の仕方に、ミシェルは戸惑いの色が隠せない。


(あれ…?私、どうしたんだっけ??)


頑張ってこの状況に陥るまでを思い出そうとして、頭がズキッと痛んだ。

さらに頭がぼうっとして上手く考えられない。
身体が熱い。


(私、熱を出したのね…)


自分の状況を何とか把握する。

ミシェルは未だに泣いている使用人を慰める。
その時、ミシェルの部屋の扉が開いた。


「やあミシェル、身体の調子はどうだい?」

「お兄様…」


にこにこと人懐こい笑顔を浮かべている兄_ミカエル。

熱のせいであまり表に出ていないが、ミカエルのこの登場に内心かなり驚いていた。

ミシェルはもともと身体が強い方では無く、たびたびこうして熱を出して横になる事が多かった。
もともとあまり部屋に訪問してくる方ではなかったが、そんな時には部屋に近づくことさえなかった。


母が、そうさせなかったからだ。


ミカエルは母に過剰なほど期待をされていて、ミシェルには政治の道具以上の感情は向けられなかった。
そんな期待を一身に浴びている兄を、母は風邪などと面倒な事に巻き込ませないように細心の注意を払っていた。


だからこそ、熱を出しているミシェルの様子を見に来るなど、今までには無かった。


「お、お兄様…良いのですか…?今、私の所に来てしまって……」


私が怒られるならまだしも、せっかくお見舞いに来てくれた兄が怒られるのは嫌だ__


そんなミシェルの気持ちを汲んでか否か、ミカエルは優しい笑顔を浮かべて言った。


「良いんだよ、ミシェルの事が心配だったからね。

ほら君達、いつまでもそんな体勢ではミシェルが休めないだろう?」


柔らかな口調で諭すように使用人達をミシェルから放す。

そして使用人を部屋から下げると、ミカエルはベッドに腰掛けた。


「大丈夫か…?最近はだいぶ身体の調子が良さそうに思えたが………」


心から心配そうに見つめるミカエルに安心し、「大丈夫です」と笑顔で答えた。


「……ところで、何かあったのか?ルシアと。」

「え…??ルシアと…ですか??」


思い出そうと少し考えて、顔が熱くなっていく事に気がついた。

兄がこう言った事に、なんとなく覚えがあったからだ。


(そ、そうだった…私さらわれて…ルシアが助けてくれて…それで……)


ミシェルの考えた事が伝わったのか、ははーん…と意味深な相槌を打つミカエルに、余計顔に熱が集まっていく事が感じられる。


「…ま、想像はつくけどなー…ふうーん、ルシア君がミシェルにねえ……」

「で、でもっルシアだって私にそんな気があったとは思えないし…!き、キスなんて……」

「ほお、キスされたのか」


はっとして口を抑えたがもう遅い。
(しまった……)

ミカエルは悪役のようにニヤリと笑い、ふと優しい笑顔を浮かべてミシェルの髪を撫でた。


「まあ、そう言うな。ルシアがそんな何となくで出来るような奴とは思えない。

ちゃんと、考えてやれよ。ミシェル、お前の気持ちをちゃんと大切にしてやるんだ」

「私の…気持ち、ですか…?」

「ああ。ミシェルは自分の気持ちに気付いていない。…いや、気付かないようにしているのかな…

ま、とりあえず悩んでみろ!悩んで悩んで、ちゃんと自分の事を考えてみな」


にこっと人懐こい笑みで優しく髪を撫でてくれた。

ちゃんと見守ってくれる。

そう思えた。
気遣ってくれる兄の為にも、ちゃんと考えなければならない。

(きっとこれが、私の夢にかかわる事になる)



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