王子と王女と婚姻話

□最終話
3ページ/7ページ


***ルシア視点***


「…はあ………」


何度目になるか分からないほどの溜息をついた。

昨日ミシェルがさらわれて俺は必死になって探した。

見つける事が出来たのは夕方になってからだ。
さらわれたのが昼ごろだったためかなり長い間怖い思いをさせてしまったと思う。

まあ、それに関しても自己嫌悪に陥っているが、もっと重要な事を俺自身がしてしまった。



「…何であんな事しちゃったかなー……」



夕方にミシェルの居場所が分かり、助けに行った。そこまでは良い。

ミシェルの縄を解いてやった。帽子も返した。そこまでも大丈夫。

でも、その後俺何したよ?


(いくらなんでもいきなりあんな事…

いや、無事だった事にすごくホッとしてつい…

んな事許されるか!!!!)


自分で自分に突っ込みながらまた溜息をついた。

ボスンとベッドに倒れ込んだ。


__嫌われたくない___


それが俺の頭の中をぐるぐると廻っている。


(あいつの気持ちを確かめてもいないのに、キスなんかして…

嫌われるだろ……)


我ながら馬鹿な事をしたと思う。

今のままでもそこそこに幸せを感じていられた。
わざわざ危険を冒してまで今の関係を壊すような事、するつもりなんて無かったんだ。


(もう二度と、あんな辛い思いしたくなかったのにな……)


視界が滲みかけた所で、扉をノックする音が聞こえた。


「ルシア殿下、エリク殿下がおいでになられていますが、いかがいたしましょう。」


エリクがどうして?

少し考えて通すように伝えると、暫くしないうちにエリクが部屋に入って来た。


「どうしたんだよエリク」

「あ、えっと……少し、様子を見にね」


エリクは曖昧な返事をしてソファに座った。

様子がおかしい。

ちらちらとこっちを見ては、目が合って慌ててそらす。
そしてもう一度こちらを見る。その繰り返しだ。

何か俺に対して後ろめたい事があるのだろうか。


「何かあったのか?」

「え!?…えっと…

あ、ミシェル姫と何かなかった?」


その瞬間、俺は石のように固まった。

今その話をするか。

そんなオーラを出しつつ硬直したままの身体をギシギシ言わせながら言う。


「ナンモネーヨ」

「な、何かあったでしょ!?変だよルシア!」


「変なのはいつもの事だけど…。」ぼそりと聞こえたその言葉には、今は反応しないでおこう。


「何か進展があったの!?」


異様にきらきらとした目で見つめてくるエリク。
何だか噂好きのおばちゃんみたいになってるぞ。


「…進展…したような…


むしろ後退したような…。」

「こ、後退…?」


エリクは俺の言葉にがっかりしたように肩を落とした。
何をそこまで気にしているんだろうか。聞こうとした時、俺はエリクの口からこぼれた一言を聞き洩らさなかった。


「…失敗しちゃったのかな……」

「失敗って何の事だよ。」


エリクははっとして口を押さえたがもう遅い。


「か、関係無い「訳ないだろ。はっきり言えよ、何した?」


そこまで怖い顔をしていたのか、エリクはびくりと肩を震わせて、ポツリポツリと言い始めた。




.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ