王子と王女と婚姻話
□最終話
6ページ/7ページ
「え、えーっと……つまり?」
「俺たちはこいつに騙されてたって事だよ。」
エリクは謝罪と共に、あることの真相を話し出した。
あること、それは"ミシェルの誘拐事件"のことだ。
結論から言えば、あの事件は全てエリクが仕掛けた"ドッキリ"だった。
エリクは中々進展しないルシアとミシェルを心配していた。
何とかして後押し出来ないかと考えた結果が、あのシナリオだったのだ。
「怖い思いをさせて、本当にごめんね…ミシェル姫……。」
「そ、そんな…謝らないで下さい、エリク殿下っ
私は気にしていませんから…
それに、エリク殿下なりに私たちを思って下さった結果ですし……だから、その、殿下が謝る必要はありませんよ…!」
「ミシェル姫……っ」
「大丈夫ですよ。」と、ミシェルはエリクにそっと微笑みかけた。まあ、何て回りくどいのだろうと思ったりもしたが、エリクが涙目で謝って来られたら許す他無い。
そんなミシェルの気持ちを知ってか知らずか、ルシアは尚もエリクを責めようとする。
「だいたい、エリクがそんな首突っ込まなくたって上手くいってたっつーの!
それにエリクが何かすると無駄に回りくどいし面倒臭いし…」
「ルシア!そんなに言わなくったって良いじゃないですか!いくら照れ隠しでも、もう少しソフトな言葉遣いをなさってください。」
「なっ、照れ隠しって…俺はそんなことしてな…」
「していますよ。ルシアったら分かりやすいんだもの。」
「分かりやすいってどこがだ!」と未だに喚くルシアを放置して、ミシェルはもう一度しっかりとエリクに向かった。
少しだけミカエルを見て、柔らかな笑顔を浮かべる。
「エリク殿下、私は本当に気にしておりませんよ
むしろ、感謝していたくらいです。
ルシアはあんな事を言っていましたが、私はきっと、お互いに気持ちなんて伝えられなかったと思います。
…なんて、こんな事を言ったらルシアは怒るでしょうね」
ふふっと笑い、ミシェルはそのまま話を続ける。
「ありがとうございます、心配して下さって。
すごく、嬉しかったです。
こんなにも優しい方が側に居て…心配してくれて……ルシアは、幸福者だなぁって、愛されているんだなぁって、思いました。
それが、すごく、すごく嬉しいんです」
「だから、ありがとうございます。」
ミシェルは、出来る限り感謝の気持ちを伝えるために、エリクの目を見て、にっこりと微笑んだ。
ミシェルの気持ちが伝わったのか、エリクは安心したようにぱぁっと花の咲くような笑顔(男性に使ってよいものかと思ったが)を浮かべた。
「と、まぁルシアの事ばっかり言ってるけどな…ミシェルも俺たちに愛されてるってことは分かっててもらわないとな〜♪」
にこにこと人懐こい笑顔を浮かべたミカエルが言う。
「"ルシアは"じゃなくて、"私たちは"…だろ?」
ミカエルは太陽のような暖かい笑顔でミシェルの頭を撫でた。
なんだか嬉しくて、でも少し照れくさくて、困ったような笑顔になってしまった。
「…はい、お兄様。私は…私たちは幸福者です!」
『幸せ過ぎて恐い』
そんな台詞を聞いたことがある。
きっとそれは、今の私にぴったりな言葉だ。
大切な人が側にいて、愛して、愛されて、互いに想い合える。
今日も明日も明後日も、そのずっと先の未来も
「幸せだね」って笑い合える未来
そんな未来しか、私には想像が出来ないから
「ふふっ
ねぇ、ルシア」
いつもの高原で、柔らかな風に包まれながら微笑みかける
ミシェルの膝に頭を乗せたルシアの、オレンジのかかった金色の髪を優しく撫でた
「ん?」
眠たそうに、それでいて優しい響きのある声で応えたルシアに、こちらも優しい声音で囁いた
「大好きだよ」
end
next:あとがき
.