ガッデム
□2、『入学式』
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「あれ、帝人?」
入学式。もろだしは来良学園の新1年生であるから当然、式に出ていた。正臣や帝人も同い年でこの学校に入学すると言っていたので会えるものと思っていたが、入学式が始まっても見つけることができなかった。頭をかっくんかっくんさせて校長を始めとする祝辞に耐え抜き、やっと開放され教室に向かう。私のクラス――A組に向かう列の中に彼を見つけた。
「あ、えと……まるだしさん」
「やっほー、いつか振りぃ」
中学からの友人である正臣に紹介され池袋を散策した日から帝人とは会っていなかった。
「同じクラスみたいだね、よろしく」
「おうよろしくー。……あのさ帝人」
「ん?」
先日から感じていた違和感を口に出してみた。
「"まるだしさん"じゃなくて"もろだし"でいいよ? なんていうか距離感じるし。私も帝人って呼んでるし」
帝人に許可を取ったわけではなかったが自分は名前を呼び捨てしている。どうせなら帝人もそうしてほしい。
「え!? …ああ、うん。そうするよ」
「うん、良い返事だ」
一つ距離が縮まった気がする、嬉しいものだ。どうしてそう思ったのか……理由が頭をよぎるが無視した。
ふと周りを見れば人が少なくなっていた。大体の生徒が教室に入ったのだろう。
「置いてけぼりくらったぽいね。クラスは……A組だっけか。」
「僕たちも行こう? そろそろHR始まるだろうし」
「うん、はい」
「?」
もろだしが右手を差し出した。帝人は意味が解らないようでキョトンとした顔でいる。
「いや、手。おてて繋いでランデブー、的な」
「ここ学校。それにランデブーって何」
「…帝人。さっきまで"まるだしさん"なんつってたのにツッコミの鋭さが正臣並なんですが」
ジト目でもろだしは帝人を見る。もろだしは反応してくれるか不安だったがしっかり突っ込んでくれて嬉しい。が、扱いが正臣レベルまできてるのには些か不満だ。
「だってまるだしさ…もろだしがそう呼べって言ったんじゃ……! それにギャグのレベルが正臣と同等っていうか……しょうがないよ」
「お、初の名前呼びー。嬉しいねぇ」
今度はもろだしが強制的に帝人の手を握った。
「さあ行こうではないか、野郎ども!」
「"共"じゃないでしょ、僕一人なんだから。」
こんな感じでやんややんやしながら教室に向かって行った。
2012/3/18
2012/3/28修正
2012/5/29