ガッデム

□3、『巨乳美女』
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「はいはいはーい!!私風紀委員!絶対!譲らん!じゃんけんとか!ふざけんじゃねーっ!!」

 さてはて第四話。第一声はこのサイトでの主人公、『まるだしもろだし』。


 健康診断が終わり、今はHR中。そんな中元気よく――物凄く騒々しく――手を挙げたもろだし。
 HRの議題は委員会決め。「希望者が多ければじゃんけんで」という決め方に速攻異議が。

「まあまあ落ち着きたまえよもろだしくん」

「落ち着いちゃいられんよ、正臣くん。『学生のとき風紀委員だったんだー』っていうのが私の夢なわけよ」

 『え、そんな理由?』
 そのときクラスの心は一つになった。 

「じゃあ、他にやりたい女子いるわけ?」

 もろだしがクラスに問えば、手を挙げる女子は無し。

「それでは女子の風紀委員はまるだしさんで」

 なんとか司会が纏めてくれた。
 
「いやいや。どうなるかと思ったが要望が叶って何よりだ」

「随分横暴だったね」

「帝人、今更だ」

 上からもろだし・帝人・正臣。悪ノリしていた正臣ももろだしのはフォローせず。

「あら、帝人きゅんってば辛辣〜」

「"きゅん"って何」

 え、よくね? くん付けならぬきゅん付け。
 嫌そうに眉をひそめる帝人。もろだしその眉をグリグリ。

「そうだ、ナンパに行こう」

「いやいや正臣君? 空気読みなされよ」

「ツッコむの忘れてたけど、なんでここにいるの」

 帝人、それはそれで酷い。顔は充分笑顔なのだが纏う空気が冷ややかである。
 
「クラス委員がまだ決まってないのですが、誰かいませんか」

 暫く沈黙が続いた。そんな中ひとりの少女が手を挙げた。
 確か園原杏里とかいった――巨乳美女。司会はさっさと園原杏里と替わり、自分の席に戻っていた。
 残るは男子のクラス委員。もろだしが帝人に視線を向ければ手がもぞもぞ動いているのが見えた。……迷っているのか。
 ちなみに3人がくっちゃべっているのは帝人の席。正臣ともろだしが椅子を寄せ合っている。
 
「俺も罪な男だ」

「あんだって?」

 園原杏里がこっちを向いたときだった。正臣から発された思いっきしナルシスト発言。

「彼女、俺に惚れたな。これから始まる危険にデンジャラスなリスキー夜に不安を感じてる様子だぞ?」

「いやいや、そりゃ勘違いだーって」

 珍しくもろだしがまともな発言をしたと思ったのだ、帝人は。だがもろだしは素晴らしく予想を裏切ってくれた。

「ありゃ私への視線だよ。見るからに百合っぽい顔してんじゃん、彼女。いやー、このもろだし様は女子にもモテちゃうんだなーこれが!」

 どんだけ自信過剰なのだ。ドーンと文字がバックに見えるようにふんぞり返って言い放つ。

「ごめん、日本語で喋って。だってほら、ここは日本だから」

「丁寧に毒を吐かんでくれよ」

「最初に俺の前に立ちはだかる危機がお前だとは思わなかったが、愛に生きる俺には親友を殺すことに欠片も躊躇いは無い」

「いや、せめて少しは躊躇おうよ!?」

 ここで吹っ切れたのか、漸く帝人が手を挙げた。これでクラス委員も全員決まり、HRは終わったわけだ。



「いやいや正臣よ」

「なんだいもろだしよ」

ぐふぐふ

「帝人も済に置けないですなあ」

「ホントだよ。小学校ん時は幼馴染と噂を立てられただけで泣いてたお前が、何時の間にか自分から積極的にラブラブランデブーでハンターチャンスとはな」

「あー、はいはい」

 ニヤニヤなもろだし、日本語になってない正臣に挟まれる帝人。
 一見、不良に絡まれている高校生の図だ。

「そういえば琳は委員会入ってたよね。紀田君は何かに入ったの?」

「おう、風紀委員」

 茶髪にピアスが風紀委員……。

「うわあ……」

「うわあってなんだ。」

「いやいや、こんなのが風紀委員だったら……ねえ?」

「お前も似たようなもんだろ、金髪だし」

 見事に脱色して金に輝く頭のもろだしは他人の事は言えない。

「それにしてもお前のクラスの風紀委員は風紀に厳しそうでやだなあ、もろだしは除外だけど。風紀委員として思う存分風紀を乱したかったのに」

「あ、それ同感。葛原くんだっけか? 真面目そうな顔だったよねー」

「……何言ってんの?」

 正臣の動機に少し親近感。それが浪漫というものだ。

「そうだ、ナンパに行こう!」

「イケメンを探しに!」

「本当に大丈夫?」

 本日ナンパの話題は二度目だ。
 帝人に呆れられながらも玄関に向かっていると女性と男性の言い争うような声が聞こえてきた。



2012/6/1
2012/7/31
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