ガッデム

□1、『初対面』
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 今日は春休み真っ只中の休日。
 中学からの友人に「幼馴染に池袋を案内するから」と呼び出されたまるだしもろだしは駅周辺でその友人を探す。そうすれば見覚えのある茶髪の少年。

「…ろう。三択で選べよ、@紀田正臣 A紀田正臣 B紀田正臣」

 隣の黒髪の少年にギャグをかましている様子。

「やっほーぅ」

 彼の見せ場を遮るのは非常にに心苦しいが、終わる気配がないので声をかけた。

「お、やっと来たな。天下の正臣様を待たせるじゃなーいっ」

「じゃあ俺様神様仏様の余に歯向かうんじゃなーい」

「ボケにボケを被せる所業…相変わらずだな」

「え!?…えと……」

 黒髪の少年は戸惑う。初対面の子にいきなりボケられて、余裕で返せるのは滅多にいないだろうが。
 
「あ、コイツ中学ん時の同級生。入学前に同じ高校の友達の一人くらい作っておいたほうがいいだろ?紹介してやろーと思ってさ」

「いやいや初めまして。まるだしもろだしでーす。正臣の幼馴染っていうからどんなチャラ男かと思えば、これまたびっくり好青年!よろしくね!」

「あ、はい。よろしく…」

「なんだよぅ。せっかく女友達の少なそうなお前にいいきっかけになればって会わせてやったのに!」

 はじめましての挨拶がマシンガントーク、さらに騒がしい幼馴染に挟まれてだと身構えてしまうのも仕方ない。
 この少女の第一印象は陽気な人だなということ。自分とはタイプが違うものの――この幼馴染のお陰か――自然と仲良くなれるだろうと思った。

「んで、コイツが前話した帝人。」

「竜ヶ峰…帝人です」

 何処ぞの金持ちだ。もしもろだしがツッコミ担当ならこう言うはずだ。残念ながら、もろだしは違い――

「うん、凄く仰々しい名前だね。…どっかのハンドルネーム?」

――こうなった。

「あ…一応本名なんですけど」

「またまたビックリ!いいねぇ、平和島静雄に負けないくらい名前負けしてるよ」

「平和島?」

 自分の名前についての話から聞き覚えのない名前が飛び出した。帝人は疑問を返したがさすがマイペースのもろだし、スルーされた。

「お互い第一印象はまずまずみたいだな。もろだしもいつか思い知るぞ、コイツが如何に冷たいツッコミをするのか!」

「失礼な。それは紀田君のギャグが寒いからであって、僕は適切にツッコんでいるつもりだよ」

「ツッコミがこれだけしっかりしてると、私たちもボケ甲斐がありますな」

「だろ?俺たちでさらに鍛えてやるよ」

「いやもう充分」

 このボケ担当二人――紀田正臣とまるだしもろだし――がいれば、どんなに笑いのセンスがなくても素晴らしいツッコミスキルを獲得出来る気がする。



 竜ヶ峰帝人、まるだしもろだしの初対面であった。



2012/3/16
2012/5/29修正
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