ガッデム
□2、『入学式』
2ページ/5ページ
「まるだしもろだしでーす。万年恋人なしという汚名は悲しすぎるので、みなさんのカッコイイお兄さんをぜひぜひ紹介してください」
ある程度の笑いがとれた、教室の静かな空気を多少は軽くできただろう。
クラスのメンバーは、高校生らしいという言葉が似合う子達ばかりで正直面白味のないメンツだなと思った。
「園原杏里です」
どんな子かなと目を向ければ……巨乳美女。どちらかというと派手な格好ではなく地味な方なのだが、このクラスではそれが浮き上がってみえた。彼女に興味が湧いたので、後日正臣とナンパしてみようと心のリマインダーに書き込んだ。
HR終了後。
帝人と正臣の3人メンバーでなんとなく合流した。
「あー、昨日はお前の引越し作業とかネットを繋げるのとかで一日つぶれちまったからなあ。今日はどっか案内するから何か奢れ」
「お、私もついでに!」
「ついでで奢れるほど金持ちじゃありません」
その後なんやかんやコンビニでスナック菓子を買ってくれた。「太っ腹ー」と褒めておいた。そこから繁華街へ向かう。
「帝人、行きたいとこある?」
「あ、ええと……本屋って何処にある?」
只今ファーストフード店前だ。
「あー、本屋だったら、この辺じゃあジュンク堂が一番なんだが……何を買うつもりよ?」
「ええと、とりあえず帰ってから読む漫画でも買おうかと思って……」
「そっち方向にマンガ沢山置いてる店があったよ。そこ行こう」
只今ゲームセンター前。…って、実況中継になっちまった。
先日と変わらず街をキョロキョロしている帝人。よく会話できるな、器用さんだ。
「なんか同人誌とかも売ってるみたいだけど」
「だよね、素晴らしい品揃えだよ!やっぱ腐ってるわtむぐっ」
この話題になるとね……なんつーか、血が騒ぐんだよね。そこから私のターンだったはずが正臣に口を塞がれた。
「はいもろだしちゃん黙ろうな」
「酷い!これからがいいトコなのにっ」
「……」
なんか目線が痛い、蔑まされてる感が凄いです帝人さん。だが許してやろう、うわもろだしさん優しい。
そこで突然かかった声。
「紀田君じゃん」
「あらあらもろだしちゃんも。久しぶり」
「あ、お久しぶりです。相変わらずですね、お二人とも」
振り向けば男女の二人組。
「腐り話に狩沢さんあり」 こんなピンポイントで来るなんて……!
「そっちの子は誰?友達?」
「あー、こいつは幼馴染で、今日から一緒の高校になったんすよ」
「へぇ、今日から高校生になったんだ。おめでとう」
いつも思うけど、この二人とまともに会話できる気がしねー。通常運転時の狩沢さん遊馬崎さんと喋れる門田さん、ホント尊敬だ。
「こちらの美人なお姉さんが狩沢さん、んでこっちは遊馬崎さん」
「もろだしちゃん、紹介が明らかに差別ですよぅ」
「……あ、え、ええと……竜ヶ峰帝人っていいます」
さて、帝人の名前にどんな反応を示すかな?
「ペンネーム?」
「なんで高校一年生がペンネーム使うのよ。……ああ、ラジオとか雑誌投稿とか?」
「あ、あの、一応、本名です……」
ほらやっぱり。
「嘘ぉ、本名なの!?」
「ホント吃驚もんですよね。未だに偽名じゃないかって思ってるぐらいですよ?」
私は真面目にそう思っている。
「それはちょっと違うでしょ」
「いや、凄い! カッコいいじゃないすか! いやいやいや、マンガの主人公みたいだ!」
名前でこんなに弄れる人他にいない……あ、静雄さんがいたか。
「そんな……照れるじゃないですか」
「紀田君が照れてどうするのよ」
なんか黙ってるなと思ったら、やっぱりそう来た。まあ、その後なんやかんやで狩沢さん達とは別れた。狩沢さんと遊馬崎さんとの会話は疲れる。私も一緒に盛り上がる時は良いんだ、うん。だが二人のみでヒートアップされると、なんというか圧される。
露西亜寿司を通るとサイモンと会った。帝人はやはり驚いたようだ。そりゃ見るこた無いよな、黒人で法被着てるロシア人なんて。
平和って素晴らしい。ああ、あの人が現れなければ。
2012/4/11
2012/5/29