最小公倍数

□六話
2ページ/5ページ





油断した。


最近どうもあの化け物が少なくて、気を抜いていたせいもあるのだろうけど、


「…っは、はっ…」


只今、絶賛追いかけられ中です。はい。






学校からの帰り道。


今日はバイトなので啓悟とも別れて1人で歩いてたら、背後から嫌な気配がした。


人間、嫌な予感ほど当たるもので。


悪寒に襲われ恐る恐る後ろを向くと、白い仮面の化け物が。


「…っ!」


今にも襲いかかりそうなそいつを横目に見ながら、僕は走り出した。


化け物は負けじと僕の後を追ってくる。


せめて…


・・・・・・・・
黒装束を着た誰かのもとに行かなくては。


ほつれそうになる足を、必死で動かす。


ゆっくりと迫る命の危険に頭が警鐘を鳴らしていた。


――ザッ


「――…うわっ!」


疎かになった足元にあった石で躓いて、転ける。


身を起こすも、目の前には僕に襲いかかろうと、鋭い爪を振りかざす化け物の姿が。


もう、だめだ。


諦めて目を強く閉じようとした時、――…目の前を橙が舞った。


――ザンッ


「てめぇ!浅葱に何してやがる!」


それは、黒装束を着た…


「行くぜ!」


紛れもない友達の姿。




*
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ