最小公倍数

□八話
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結局学校についたのはお昼前だった。


四限は受けずに、昼食を食べるために屋上へ向かう。


生憎の曇り空に、今朝の夢がフラッシュバックしかけた。


思わず、首元に手をあてる。


「バカ、だなぁ」


傷跡なんて残っているはずがないと自分が一番わかっているのに。


「おーっす」


「あ、啓吾とチャド……一護は?」


揃って屋上に集まったメンバーの中に、みなれたオレンジ色がいない。


「なんか行方不明でさー、あいつ」


「ふぅん…とりあえず先に食べとく?」


昼休みも長いとはいえない時間だから。


屋上のど真ん中にお昼を広げて、だべりながら食事を進める。


「…さて、そろそろ教室に戻ろっか」


時計を見て、ゆっくりと動き出すと啓吾とチャドもそれに倣った。


「結局来なかったね、一護。どうしたんだろ」


「んー…まぁ一護だしなぁ。どっかで不良に絡まれてたりして!」


はははっ、と冗談半分に言った啓吾の言葉に僕とチャドは固まった。


いや、だって、ありえそうな事なんだよね…


「……探して、くる」


「いやいやいやチャドォォ!?冗談だからな!?」


「…じゃあ僕も探しに」


「お前はからかってるだけだろ!」


ちぇっ…ばれたか。


廊下をわーわーと騒ぎながら歩いていたら、教室からとんでもない殺気を感じた。


「う、うおっ!?何だこりゃ一体…」


教室の入り口付近に大量の椅子と机がごった返しになっていた。


その中央、鬼神の如く立っているのは…有沢さん?


怒りのオーラで具現化して視覚的に捕らえられるんですけど…


「コココ、コラァ!」


騒ぎを聞きつけた教師が有沢さんに状況を問う。


小川さん曰わく、知らない人が窓から入ってきたらしい。


国枝さんまでそれを庇った。


「なに?なに?
これってどういう展開なの?」


呆然とした啓吾の呟きに、僕は静かに同意したのだった。





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