僕の世界が変わるまで。

□ちゃいるど きる
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銀時は誰よりも大人だった。




先生の言葉の意味を理解して行動し、
子供らしからぬ言動は常で、
いつだって落ち着いた子供だった。

名前は忘れてしまったが
一緒に遊んでいた子が木から落ちて
手が逆に曲がっているのを目の前に
俺はただただ絶句していた。
どうすればいいのか焦っていたんだ。
大人の人を呼べばいいのか、それとも
俺が何かしてあげなければならない状況なのか・・・悩んでいる間にもその子は泣き叫ぶ。


「なんだよ、骨が折れただけじゃん」


皆がオロオロしている中、
つまらないと言った様に銀時が告げた。
曲がった手首から視線を外し
一気に銀時を見た。


「こんなのすぐ治るよ、医者に見せれば?」


人事だからそんな事が言えるんだと
周りはざわついたが銀時は顔色を変えない。


「喚く暇があるなら誰か一人でも
コイツの為に医者を呼んでみろよ」


いつものようにぼんやりとした表情で
銀時は怒鳴るでもなくそう言った。
そんな銀時に恐怖を感じた。


「ヅラ」

「・・・ヅラじゃない桂だ」

「いい子ちゃんぶってねーで
俺を嫌いになっちまえよ その方が楽だろ
お前も」



銀時の言い方は時々 冷たく感じる時がある。
その所為か皆は銀時を受け入れられないでいた。
だけど俺は先生に言われたから。
仲良くしてくれと言われてしまったから。
だから期待に答えたいと思って銀時に
手を何度も何度も差し伸べた。
それなのに銀時は俺の手を握ろうともしないで
そんな風に言ってきたのだ。


「そんなこと出来ない!」

「先生と約束しちゃったからー
とか言うつもりか?
同情とかうざってーのやめてくれる?」


まるで独りは平気なんだとか言ってるようで。
いや、低能な奴と関わりたくはないんだ。
だからいつも銀時がちゃんと「みる」のは
ちゃんと「話す」のは松陽先生なんだ。


「俺はお前が嫌いだ銀時」

「・・・・・・・・」

「上から目線で話すお前が嫌いだ」


そう言うと銀時は少し困った顔を作った。
意外だ。
こいつもこんな表情をするとは。


「そんなつもりはなかったけど・・・・
まぁ、俺もお前は嫌いだよ
思ってもいないことをまるで自分の考えのように・・・・俺と友達になってどうすんの?」


「・・・あ・・・・・・それは・・・・」

「先生はそんなことで褒めない。
お前を絶対に褒めない。」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「褒められたいんだったら、
俺と、ちゃんと目を合わせろ。
向き合ってくれ、そんで
ちゃんと友達になろう。
どうするかはお前の自由だけど」



銀時は優しく笑ってくれた。
きっと俺が断っても銀時は
ずっと笑っていてくれるんだ。


「・・・・銀時・・・ごめん・・・
っ・・・・ぅううう ごめん〜〜〜」


「ははっ ぶっさいく」


差し出した手を
やっと握ってもらえた。




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