小説1

□忘却
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人間生きていれば 
辛いこと悲しいことって
そりゃ数え切れねえくらいあんだろ。
忘れないとやってけねえって時もあんだろ。

そうなるとやっぱ 酒の量が増えるわけで。


「うえぇっぷ・・・やべぇ〜・・・
飲みすぎたかな・・・・うぇっ・・・」


どんっと誰かにぶつかった。


「お〜い きおつけやがれぃ
どこ見てあるいてんだよ」

「・・・こんな時間まで飲んでやがったのかよ」

「あれぇ〜 真撰組の土方君じゃぁないの」

「寄るな くせぇ」

「ぁあ”!?んだとテメーこそマヨマヨの臭いすんぞ!?くっせー!」

「警官侮辱罪でしょっ引くぞゴルァ!!」


チッと舌打ちをして背を向ける土方。


「ちょっとちょっと待ちなさいよ!」

「あ?」

「送れ。」

「は?」

「もしくはタクシー代よこせ。」

「・・・・殺してくれと頼んでるのか?」


鯉口を切って今にも刀を抜かんとする
土方に手を差し伸べる。

「カモン金。男に送ってもらうなんて
ヤダからさ 銀さん」

「分かった送ってやるよ・・・」

「きゃっ 土方君やっさすぃ〜♪」

「懲罰棒と云う家までな」

そりゃもう 警官とは思えぬ悪役がおで
言われた。


「ねぇ」

「・・・・・」

「ねぇ ちょっとホントに!!??
ホントに懲罰棒行き!!???」

「だから言っただろーが 静かにしろ」

「ぎゃーーー!!外せ外せ!!」


手錠をしっかりかけられて 今まさに
連行されている。

「もう酔ってませんから外してください」

「・・・・・・・・・」

「・・・もう老いぼれちまったか!?
耳は健在ですか???耳からマヨでも
出てきてんじゃねーの!!?」

「だあああ!!静かにしろっつってんだろ!」

「しーーっ・・・・」

「殺す。」




「大体なんでそんなんなるまで飲んだんだよ
 金もねーくせに」

「金はねーよ。ツケだよ」

「・・・・お前まじでしょっ引くぞ」

「いいじゃんいいじゃん ・・・・
誰だって嫌なことありゃ酒ビタにも
なんだろ」

「・・・・・・・」

「全部忘れてぇのに 忘れたいことって
中々忘れられねぇもんだろ。」

昔 ある人が云ってた言葉。
それが今頭の中で蘇る。

「昔な 聞いた事だが神様は俺たちに
いくつかの贈り物をしてくださったんだと。
その一つが 忘却 ってもんだったらしい。
人はな・・・辛いこといつまでも引きずって
生き続けるのは無理だからってよ。」


そりゃ全てとはいかないが
その忘却のおかげで俺は今迄生きてこれたん
だと思う。
だけど どうしても忘れたいことは
中々忘れられないようにできていて。


「全て忘れたいときにゃやっぱ
酒に頼るしか俺は手がねーのよ・・・」

「・・・調子が狂うんだよ・・・・
あーぁ さっさと帰ってそのままくたばれ」

「はいはい・・・じゃーな」



かなり熱っていたはずだが
帰り道に吹く風はかなり冷たく感じた。





end・
 

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