小説2

□出会う前の僕らは・・・
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「父上 ご飯持ってきましたよ」

「・・・今日は誰が作ってくれたのかな」

「もちろん私ですが?」

「そうか・・・うん・・・・」


そこには真黒になってしまった
卵焼きと白米。
いや・・・暗黒物質・・・?が
用意されていた。

「あ 父上起きちゃだめよ」

食べる為に起き上がろうとしたが
娘に止められた。

つい最近のことだった。
志村の旦那が病に侵されていると知ったのは。

俺は殺しても死にそうにないと
自分で勝手に思い込んでいたのだが。
そうか 最後が近いか。
まだ幼い我が子を二人残して逝くのは
とても不安だ。
妻が死んでからというもの借金だらけの
日々に見舞われ。
この子たちに何一つ父親らしいことを
してやれてないというのに。

「せめて親戚がいれば お前たちを
預けられるのに」

「なに言ってんですか。
もう死ぬ気でいるんですか?
まだまだ生きていてもらわないと
私たち困りますからね 父上」

「ははっ」

よくできた娘だ。
俺は娘の頭をそっとなでた。

「父上・・・死んじゃいやです」

まだ生きているというのに
ここにも もう死んだ気でいる奴が1人。
息子の新八だ。
こいつはダメだ。
男のくせにすぐに泣きやがる。
姉ちゃんの背中に隠れてばっかで
1人じゃなにもできやしない。
長男なんだからと叱ればまた泣く。

「おめー 侍の息子だろうが。
侍の子がそんなでどうするよ」

頭をなでればまた泣いた。


息子はまだ11だ。
娘は2つ上の13。

「誰かいねーかい こいつらを丸ごと
世話してくれそうな酔狂な奴ぁ・・・」

「もう そんなことより今は
自分の体を心配してください」

娘の妙にきつい一言をくらわされた。



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