小説2

□出会う前の僕らは・・・
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ほんの気まぐれだった。
MHKの今時ないなと思うような
くさいメロメロドラマを見ていた。
何もかもがくさすぎて
正直呆れるようなドラマだ。
このドラマの主人公の男も
ただ格好つけているだけのチャラ男。
こんな男よりも私の旦那のほうが
断然格好いいと言える。

そして ふと思い出した。
昔の事。
あぁ 旦那が生きていたら
今頃どんな風になっていたのだろうか。

いや もう年も年なんで
いちゃいちゃしている風景を
想像したらいけないよ?



しかし うん。

思い出したついでだ。
大晦日も迎えたし。
久しぶりに旦那の墓参りでもするかと
準備をするために腰をあげた。











もう死ぬと何回も思ったのに
まだ死ねないでいる。
かれこれ何時間ここでぼーっとしているか
分からない。

「頑丈にできてんね 俺」


コトッと何かを置く音がした。

ばばあの声がする。
墓石に何か語りかけているようだ。
なかなか来れなくてすまない。
あんたの好物の饅頭を持ってきたとか。

「・・・・・・・・・」

饅頭・・・・・・・・・・。

「オーイ ババア
それ まんじゅか?
食べていい?腹減って死にそうなんだ」

「こりゃ私の旦那のもんだ。
旦那に聞きな」

「・・・・・・・・・・」

俺は何の迷いもなく饅頭に手を伸ばした。

「なんつってた?私の旦那」

「・・・・・・・・・・」

なんて?
いやいや 頭イカレてんじゃないのか?
あぁ もうそんな年だからボケがきてるのか。

「しらねぇ。死人が口きくかよ。」

「罰当たりな奴だね
祟られても知らんよ」

「死人は口もきかねーし饅頭も食わねえ。だから勝手に約束してきた。
この恩は忘れねェ。
あんたのバーさん老い先短い命だろうが
この先は・・・・」


「あんたの代わりに俺が守ってやるってよ」


「・・・・はっ アンタみたいな餓鬼が
私を守るぅ?ったく何考えてんだい」

「うるせーな」

「・・・・死にぞこない 
・・・ついてきな」

「あ?」

「あたしを守るんだろ?
お手並み拝見といこうじゃないかい」

「・・・・任せとけって」


この日 厄介な約束をしてしまった。




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