短編小説
□紅ラプソディ
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「や…いやだ…頼むから…僕を一人にしないで…何処にも行かないでえええええ!!!」
* * *
「フフフ…これで僕に敵う奴はもう居ないのさ!」
クルークは星のランタン、月の石、太陽のしおりを無理矢理にもポケットに入れて突き進む。行き先は遺跡。
「あ、クルークだ! やっほー」
「げっ。クルークですわ」
「やあアミティにラフィーナ。律儀に挨拶だなんて、この僕を尊敬し過ぎじゃないかな」
クルークはいつもの調子では二人を馬鹿にする。
「あはは…」
「わたくしは挨拶していませんし、誰もあなたなんか尊敬いたしませんわ。…それよりクルーク。あなたのそのパンパンなポケットには、一体何が入ってますの?」
「ふん、興味があるのかい? 仕方がないな。教えてあげるよ。…頭下げたらね」
「なんですって!? わたくしがあなたなんかに頭を下げるだなんて、酷い妄想ね! わたくしは別に興味ないので結構ですわ!!」
「クルークもラフィーナも、相変わらず意地っ張りなんだから…」
毎度の事のように言い争う二人を、アミティは呆れたように笑う。
「もう顔も見たくありませんわ!」
「僕にそんな口を叩けるのは今だけだからね。大人な僕はキミの言い分を少しだけ聞いてやるさ」
「…もういいわアミティ。他の所へ行きましょう」
「あ…うん。…クルーク、またね!」
そして二人は何処かへ行ってしまった。
「まったく。グレイトな僕に反抗するなんて、とんだ困ったさんだな。さあ、僕も行こう」
クルークは再び遺跡へと向かう。その瞳は少しだけ反省の色が滲んでいた。
* * *
「ついにこの時がやってきた…! 僕は…僕はもっともっとグレイトになるのさ」
遺跡に着いたクルークは、自分の目の前にポケットに入れていた3つのアイテムを置き、いつも肌身離さず持っている赤い本に記されてある呪文を唱えた。
すると体がみるみる光り輝きだした。
「す、すごい………あれ?」
突然目の焦点が合わなくなり、目の前が歪みだす。同時に目眩もしてくる。
次第に彼の意識も薄れてきた―――