短編夢小説
□友達以上、恋人以上。
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「あー! 寝坊しちゃったー!!」
名前は布団からガバッと起き上がり、急いで身支度をする。
「もう、ちゃんと目覚まし時計を設定し……忘れてたー!!」
もうご飯を食べる時間も無いと思い、名前は髪の毛を手ぐしで軽く直しながら家を飛び出した。
* * *
((ん…まだ時間に余裕はあるかな…))
急いで家を飛び出た名前だが、すぐに走り疲れて歩き出すと正面にあるものを見つけた。
「ほ〜ら、キミにも甘い甘いお菓子をあげよう。僕のおすすめなんだ」
((あ、あの緑の怪しげな雰囲気を醸し出している奴は…!))
「…レムレス!」
名前の声に気づいたレムレスはお菓子を配る手を止め、パッと振り向いた。
「名前ちゃんだ! キミも、この甘くて美味しいスイートキャンディーが食べたいんだね? ほら、手を出してごらん」
「ちがう! レムレス、また女の子達に見境無くお菓子なんか配っちゃって…。だから怪しいって言われるんだからね!?」
「うう…」
レムレスは反省したようにションボリとして、両手に持ったお菓子をポケットに押し込んだ。
それを見た名前は思わず愛おしいと思ってしまった。
「…もう遅刻しちゃうから、早く教室に行くよ?」
「うん」
そして自分の一歩前を歩くレムレスの小指をそっと握った。
「普通に繋げば良いのに」
「っ!!」
気づかれないように握ったつもりが、いきなりレムレス自身に水を差されて名前はパッと手を引っ込めてしまった。
「…私はこれぐらいが丁度良いの!」
「ふうん」
――――そう、レムレスと名前は学校公認の“友達以上、恋人未満”の関係である。
* * *
キーンコーンカーンコーン…
「あ、チャイム鳴っちゃったから僕ももう教室に戻るね。名前ちゃん、また後でね」
「うん、また後で」
朝のホームルームが始まる鐘が鳴り、二人はお互いに別々の教室に入る。
そして、名前は席についてからため息をついた。
((違うクラスなのってやっぱり辛いなぁ…))
それからホームルームが始まっても、彼女はずっとレムレスの事を考えていた。
…一方、レムレスとは言うと。
((んー…僕もそろそろお菓子を配るのは卒業した方が良いのかな、名前ちゃんに怒られちゃうのは嫌だし…))
彼もまた、ホームルーム中にずっと名前の事を考えていた。