星のきらめく天空の欠片
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何の音だろうか。水の流れ。ゆらゆらと。流れに身を委ね。
靄のかかった頭のなかで沈んでいこうとする意識の片隅で自分が流されていると気づく。ああ、死体が家で発見されたら困るから川にでも捨てられたのか。だが、関係ないか。もうすぐ死ぬのだから。
ぼくは泳げない。泳ぎ方を知らない。傷だらけの体では服を脱ぐことなんてできなかった。もともと肌も弱く、夏でさえ長袖を手放せなかった。暑さも気にならなかった。どうやらこの体はポンコツで体温調節が出来ないらしい。体育も見学ばかりで体力すらない。
そんなぼくとは裏腹にかれらはぼくを生かしたいらしい。さきほどから息が苦しくない。柔らかな水のしらべ。…もういいのに。
――きたよ、もうだいじょうぶ
水がささやいた。
――きっと、もう くるしくない
風がささやいた。
ザブザブと水の流れに逆らう音がした。音が近づいて、ぼくは水から引き揚げられた。